longDream *桜が咲く季節に*
□第9話 お散歩
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朝。
朝食等を済ませた私はお散歩へ行く事にした。
「菊ー!お散歩行って来るねーっ!*」
「ええ。分かりました。どちらまで行かれるのですか…?」
「ちょっと桜の木の下まで。」
爽やかな笑みで楓は答えたのだった。
「とうちゃーく!‥あ‥!」
桜の木の下に誰か…誰か、いる。
あの‥銀髪の人は‥‥、
「ギルベルトっ!!!」
そう呼んだら彼は振り向いてくれた。
少し驚いた顔をしていたが、すぐに、
「楓‥!」
にかっと笑って手を振ってくれた。
「ギルベルト、あの日以来だね‥*」
「嗚呼、そうだな…、」
「だってあの日ギルベルト、今度いつ会うかとか何も言わずに行っちゃうんだもんね*」
くすくすと笑いながら私が言うと、ギルベルトはうっと言葉を詰まらせていた。
「でも、こうしてまた会えたから良いけどね*」
「‥そうだな。」
会話が、途絶えた。
暫く2人は無言で桜を見ていた。
ふと、あの『夢』の事を思い出したのでギルベルトに聞いてみた。
何となく、ギルベルトに聞いてみたかった。
「ギルベルト、私って、前にギルベルトに会った事ある…?」
きょとんと少し首を傾けて尋ねた。
ギルベルトは目を見開いて逆に尋ねてきた。
「お前‥覚えてるのか‥?!」
「…へ?」
どういう事か分からなかった。
覚えてる、という事は、やっぱり前に会った事がある、という事なのだろうか?
ギルベルトは私の反応を見て、少し肩を落として言った。
「覚えてるわけ、無ぇよな…。」
ギルベルトは笑みを浮かべながら言った。
その笑みはいつもの眩しい笑顔では無く、
寂しげな、何処か遠くを見ている感じだった。一瞬だけその笑みを見せたのだ。
「…ギルベルト…?」
「Σあ、な、何でもねぇよ、それで、何で急にあんな事聞いたんだ?」
「っあ、えっとね‥、夢、見たんだ。」
夢の内容をギルベルトに簡潔に教えた。
「‥そうか…。」
また、さっきの笑み。
どういう時にする笑みなのだろうか、?
「ギルベルトの事かと思ったんだけど…やっぱり違うよね、」
苦笑しながら私はギルベルトに問いかけるように言った。
ギルベルトは少し黙っていた。
それから暫くしてから、口を開いた。
「‥‥‥、嗚呼…。」
「そっか、ごめんね、変な事話して‥。今話した話は忘れて良いからね!」
「…分かった、」
それから少しして私は帰った。ギルベルトはまだここにいると言っていたので私は一人で帰った。
その私の後ろ姿を、またあの表情で見つめているとも知らずに。
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