フシトリオと短編1
□金
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金曜日
朝、今日は起きれた。
けれどシカマルさんはいない。
「…美味しい」
ピザトーストを作って食べてみたが普通にうまい。
とろとろのチーズと薄く切ったピーマンそしてハムによく合っていて我ながらさすがだ。
でももしここにシカマルさんがいたらもっと喜べたはずなのに。
「…なんで帰ってこないのさ」
シカマルさんにも食べさせたかった。
いちおう作った彼の分はもう冷めてしまったため私が頂いた。結局昨日帰ってこなかったシカマルさんは朝8時現在になっても帰ってこず連絡もない。
あの人も大学生だし付き合いとかあるんだろうけど…やはり帰ってこないとなんだか気分が沈む。
「…はぁ」
嫌な気分だ、一人寂しくピザトーストを食べきった私はなんとなくテレビをつけた。
無音の室内とはなんとも気味悪い物でこうでもしなければ軽く欝になりそうで。そのままボーっとテレビを見る。
それから幾らかして、いいともぉう!が始まる時間帯。
がたがたがたっ
「ん?」
廊下から何やら物音が聞こえた気がした。
気のせいなのか、と廊下側を見ていると再び人が倒れ込むような音が。気のせいじゃない、と確信した私は思わず立ち上がる。
シカマルさん帰ってきたのかな、一気に期待が高まりどきどきしながらドアを見ていると、
がちゃり、とドアが開く。
そこから入ってきた人物も私が思った通りの人だった。
「シカマルさん」
俯きながら室内に入ってきた、待ちに待った姿に思わず笑みが浮かび小走りで近寄る。
「おかえりなさい、遅かったですね」
「…」
「…シカマルさん?」
しかし、どうも彼の様子がおかしい。
ずっと俯き猫背で壁に寄りかかっていて言葉を発しない。
いつものシカマルさんなら何かしら言ってくれるのに。不思議に思いながらもシカマルさんの肩に手を置き、様子を伺おうとした。
まさにその瞬間。
がし、と腕を掴まれ。どす、と彼の全身が伸し掛ってきて。
へ?と驚いているとシカマルさんの体からどんどん力がなくなってきて私の体に寄りかかりながら倒れそうになった。
重みは中々で、思わず一歩また一歩と下がってしまう。一体なに、え?どういうこと。
今だ混乱しながらなんとかシカマルさんを支えようとしたが中々重い。
「ちょシカマルさん。一体なに…うわ!」
重みで後ろにずりずりと下がり続けたらソファに足を引っ掛け2人一緒にぼふんと沈み込んだ。
「うぅ…ってぎゃ!これはだめだ!シカマルさん起きて!」
その結果、シカマルさんが私の上に乗しかかっているという恥ずかしすぎて耐えられない体制に。
ぐああと熱くなる顔を感じながら慌ててシカマルさんの肩を押すが体重のせいでビクともしない。
一体なんなんだ…と思わずにはいられない状況に半狂乱になって叫ぶ。
「ほんと起きてください!無理なんですまじで!お願いしますから、シカマルさん!」
無理無理、こんなん近すぎて耐えられない。
そう叫べば、ようやく彼がピクリと動き出す。
「…う…」
「起きた?起きました?」
ゆっくり顔を上げ私の顔を見るシカマルさん。
その瞳はどこかぼんやりしているが意識は取り戻してくれた、と安心しながら「おはようございます」と笑う。
「さっそくですけどどいて下さい」
「……」
「いやいや寝ぼけてないで」
真面目にお願いしますよ。
極めて真剣な声音で言うが、それでもシカマルさんはぼやっとしていて私の上からどこうとしない。