フシトリオと短編1
□火
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火曜日
ふわぁ、と大きな欠伸をかいてキッチンリビングに降りてきた9時過ぎ。
なのに机の上には焼け目がついたパンとハムエッグ、おつまみチーズが一枚の皿に並べられていた。
誰だ、え、私は今起きたばっかだよ、父と母もいないはずなのに。と混乱する私の耳が背後からの足音を捉える。
「起きたか」
「…」
シカマルさん。
あ、そっか。私は一人じゃないんだ。
「眠いか?」
「いえ、大丈夫です。あと有難うございます」
「何が」
「朝ご飯」
本来なら私がするべきだったのだ。
女だしこの家の人だし。シカマルさんにやらせるだなんて。あ、でも美味しそう。
「別にいい。ほら、食えよ」
しかもよく見たらシカマルさんは腰だけのエプロンしてる。
大きめのトレーナーで腕まくりして、片手にはスポンジ、もう片方には洗い途中のであろう皿がある。
その姿さえもかっこよく見えてしまい思わず顔をかくす。やばい、顔赤い。
「嫌いなもんでもあったか」
「いや、大好きです」
「そうか」
「…」
今の大好きには色々と広い意味があったのだけれど、まぁいっか。
せっかく作ってくれたのでし早く食べよう、と私は椅子に座りハムエッグをがぶりと食らいつく。凄く美味しかった。
「あぁ、そうだ」
「?」
「あとで出かけてくる」
思わずむせそうになった。え、出かけちゃうの?まぁでもシカマルさんも色々と用事あるだろうし、仕方ないか。
ごほごほと喉に詰まった空気を吐き出し置いてあった水を一口飲む。ふぅすっきり。
しかしそれを見たシカマルさんはなんともいえない表情をした。
「それ」
「え?」
「俺が飲んだ…まぁいいか」
…え?
その言葉を聞いて思わず手に握られているコップを見た。
…これ、シカマルさんが飲んだやつ…じゃぁもしかして間接キ………。
「どうした?」
「……なんでも、ない」
どうしよう、この水もう飲めない。いや飲みたいけど、なんか恥ずかしいぞ。
私はそっと机の上にコップを置く。再び赤くなった顔を隠しながら。
だけどシカマルさんはそんな私に追い打ちをかけるごとく、また素敵な言葉をその口から出した。
「もし暇だったら一緒に来るか?」
吐血しそう。