フシトリオと短編1
□愛
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女の敵だ、とつくづく思う。
シカマルという人物は頭が切れ要領も良く、同年代から頼られる人だった。
時が経った今でもそれは変わらず隊をまとめる役を担ったり頭脳を買われ作戦会議にも参加させて貰ったり。
仲間内でも結構の出世頭ではないかと思う。尊敬すらある。
しかしそんな彼もいつまでも子供のままではなく、今や立派な大人。
…そういう事情も、出てくる。
イノが泣いていた。
分かってた、分かってたんだけどさ。と涙を流す。
あいつも本気じゃないっていう前提で体だけの関係を紡いだのだけれどやっぱり苦しいよ。
いつも強気な彼女が流す涙はとても痛々しくて見ていられなくて私もつい眉間にしわを寄せてしまう。
思うのは、シカマルの野郎…という忌々しい憎悪。
「イノさ、もうやめなよ」
もうイノが傷付くのを見たくない。はっきり言葉にすれば彼女ははにかみながらも頷こうとはしない。
目元が赤くなって首元には事情後の跡が残るその姿で、それでもイノはまだあいつと関係をやめようとしない。
理解できない2人の関係。そんなに辛いなら別れればいいのに。
「あかねは恋したことないからよ」
「恋って」
「辛いけど好きなの。離れられないの」
ふっと笑って私が買ってきたチューハイをごくごくと飲み込む。
確かに恋なんて素敵なものしたことない。胸がときめいたり誰かのことしか考えられなくなったりなんて経験は今まで一度もない。
だからそう言われてしまえば「そうなんだ」で終わってしまう話なのだが、イノはそれで幸せなのだろうか。
体だけの関係を続け実らない恋に恋して、それで幸せなのだろうか。
「そんなイノ…見てられない。私、シカマルに」
「やめて、シカマルには言わないで」
「そんなことも言ってられな、」
「本当にやめて。もしシカマルに何か言ったら、怒るわよ」
先ほどまでの微笑みとは一転しきっと強い眼差しを向けてくるイノ。
頬はアルコールのせいか赤みを増し、少し酔っているかのような呂律だった。
…でも、これが本音なんだろうな。
私が何かすることをイノは望んでいない。シカマルとの関係が終わることを恐れているのだろう。
「……、分かったよ」
「ありがとう。でも、また話聞いてくれると嬉しいな」
「イノって勝手すぎるよ」
でも、それでイノが少しでもラクになるならいいけどさ。
苦笑する私をイノももう柔らかな眼差しで見て、そして小さく呟いた。
「…そう、勝手なんだよね」
小さい呟きであっても聞こえたその言葉。
どういう意味なんだろう、視線で先を催促するがもうイノは口を開かなかった。
なんだかなぁ…私もチューハイをごくごくと飲む。今日のイノはおかしい。
だがチューハイをがぶ飲みする私を見てイノがこれまた自虐的な笑みを浮かべ再び
「…ごめんね、あかね」
と小さく呟いたことなど流石に知るよしもなかった。
◎三角革命の先
(ごめんね)(その意味は)