フシトリオ番外編
□それとこれとは
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「……」
中々寝れなくて暇つぶしにテレビを見に広間にやってきた私を待っていたものは。
「あかねか」
「もう12時だ。寝ろ」
空の酒瓶をいくつか机に並べ向き合いながら飲んでいるイタチさんと角都さんの姿だった。ぷらす酒臭い。
思わず眉間にしわを寄せる。
「…何してるんですか」
今はもう夜の12時過ぎ。深夜。明かりがついているから誰かいるのかとは思ったがまさかお酒を飲んでいるとは。
角都さんはともかくイタチさんまで、と呆れながら近付いていけば2人はなんてことのないように言う。
「珍しい酒が手に入ったんでな」
「飲むか」
「飲みません」
イタチさんあんたなんということを。私は未成年だしチューハイならまだしも彼らが飲んでいるのは日本酒のようなもの。臭いががっつりあれだ、臭いんだ。
とてもじゃないが飲む気はしない。
はっきり断れば2人は少し顔を見合わせた。なんなんだよもう。
でも暇だった私にとって話相手がいることは嬉しい。てっきり皆自室に戻ってしまったもんだと思っていた私は角都さんの隣に座った。
「あかねは何しに来たんだ?」
「寝れないもんでテレビでも見ようかと」
酒を飲みながら言うイタチさんにそう答えれば角都さんが「子供は寝る時間だ」とか言ったがそこはスルーさせて頂く。
学校もあるのなら早く寝るがここでの生活は毎日何をやるという決まり事がない。イコール生活が不規則になるのだ。
今日も朝起きれず昼までぐたぐた寝てしまったため寝れないのだが、とため息をつきながら2人を見れば何を思ったのかイタチさんが酒瓶を差し出してきた。
…なに。
意味が分からず見つめ返す。
「とりあえず、酌くらいしたらどうだ」
「しゃく?…あぁ、お酒入れるやつですよね。え、なんで私が」
「暇なんだろう」
角都さんも偉そうに酒のなくなったコップを差し出す。まあ暇なんだけど、暇だけどさ。なんで私が酌を…と思わずにはいられずとりあえず酒瓶を見た。
たっぷんたっぷんと透明なお酒が揺れる。そのたびに濃厚な臭いが鼻につくのだから困った。この臭い、よく親戚のおじさんが来たときに香っていたが苦手だった。
かつての苦い記憶が思い出されながらもいつまでも差し出してくるイタチさんについ酒瓶を受け取ってしまう。
「入れればいいんですよね」
「そうだ」
しょうがない。暇なのは事実なのだがら酔っぱらい達に付き合うか。
酒瓶を傾けイタチさんのコップに入れていくとふわりと香る臭いに思わず顔を歪める。
その次に角都さんのコップに入れてよしいいだろう。
こんな臭いものなにが美味しいんだか、分からないなあ。
首を傾げながらも眺めていれば角都さんが口を開く。
「最近どうだ、あかね」
「普通に楽しいですよ」
「そうじゃない」
「…そうじゃないって」
「……」
ん?一体何の話をしているんだろう。ここに来てからの生活の話を聞かれていると思ったのだけど、どうやら違うらしい。
「何の話ですか」
「…お前デイダラのことはどう思ってる」
「は?デイダラ君?…すぐ殴ってきますよねあの人。大人ぶってるし」
いきなり何の話だ。意味が分からないぞ。
急に変わった話に不思議に思いながらもそう言えば次にイタチさんが口を開いた。
「飛段はどうだ」
「…煩いですけど、良い人ですよね。話しやすいし」
「なるほどな、そうか」
「飛段はそうなのか」
「……」
飛段さんのことを聞かれたので素直に言えば何故か2人は顔を見合わせ頷き合うじゃないか。同意し合っているのか賛同し合っているのか。
彼らの質問の意図が読めない私はわけが分からなくなっていく。
「え、なんですか」
「イタチ。鬼鮫はどうだ」
「いやあれは…。あかね、鬼鮫はどうだ」
「…鬼鮫さん良い人ですよね、料理上手ですし」
「…なるほどな」
「そうか」
だからなに。
暁メンバーの印象とかが聞きたいのだろうか。だけどそういうテンションでもないような気がする。
酔っ払い共め、内心思いつつそろそろ教えてくれ、と視線を角都さんに向ければ。
「なんだ」
「なんだじゃないですよ…なんですか?え、印象?」
「気にするな」
「イタチさんまで」
隠すほどのことなのか。
私の視線など気にしないかのように酒を飲む2人に訝しげな視線を送ったがそれも無視された。
デイダラ君、飛段さん、鬼鮫さん。今暁のメンバー3人の印象というかどう思っているかを聞かれたがこれがなんなのだろう。
分からないから私も不安になるのだが、と思っていると角都さんがまた口を開く。
「そう言えばもう1人いたな」
「……いや、あれは」
「よく一緒にいるのも見るが」
「……」
…?イタチさんと角都さんが誰かについて話している。
私だけ話に入れずなんだかやだなぁと思っているとぐりんと角都さんがこちらを急に向いたので驚いた悲鳴上げそうになった。
な、なに。
「あかね」
「は、はい?」
「トビをどう思う?」
…トビ君?
仮面をつけたテンションの高い男の名前が出てきたため目を丸くする。
今度はトビ君か。いい加減この質問の意図を教えて欲しい。そう思いつつ聞かれたので答える。
「トビ君は、面白いですよね。話してて楽しいし」
「…楽しい?」
イタチさんの怪訝な声。え、どうした。
「まあ、はい」
「煩くないか?声も高いし」
角都さんまで。まあ確かに言いたいことは分かるけどトビ君のあの声にはもう慣れたしなあ。
こくんと頷けば彼らは黙る。そっちが聞いてきたのになんだその反応。ついむっとする。
「え、ほんと何の質問ですかこれ」
「…」
「…トビが一番話しやすいのか?」
「え?あー…一番かは分かりませんけど、まぁ好みも合うみたいですし、それなりには…まぁ」
「…」
だから何で黙るの。
そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか、そう思い口を開こうとした。
まさにその瞬間。
「っあかねさああああんんんん!!」
「ぎゃあああああああああああ!!」
突然の大きな声。それと一緒に巻きついてくる何か。
突然のことで驚きで考えるより先に体が動き立ち上がろうとしたがそれすらも何かに邪魔をされている。
なななな、なんなのまじで。
プチパニックでぎゃあぎゃあと叫ぶ私に角都さんが手でやんわりと制する。
「落ち着け」
「だだだ、って、なっ、はっ、え?」
「トビ、お前も驚かせるな」
イタチさんの冷静な声。
それに加え角都さんが頷く様子が目に見え、はた、と動きを止める。
…トビ?何言ってんのイタチさん。
とりあえず暴れていた体を落ち着かせ首だけゆっくり後ろに向ければ。
向けたら…あれ。
「…んでトビ君いんの」
「もう!あかねさんたら!聞きましたよぅ!」
「は、なにが」
「僕のこと好きだったんスか!今まで気付かなくてすみません!」
「……」
……ん?何の話してるんだろう。きょとんとしてしまう私にイタチさんが言う。
「実は、あかねは誰が好みなのかという話をしていてな」
「…は?」
「男に囲まれて暮らしてるんだ。何かしらそういうことが起こっても不思議はないだろう」
「……」
なにそれ。
思わず何も言えなくなる。
好み、て。男に囲まれて、て。何かしら、て。
……はあ?
「そういうテーマならまた話は変わってきますよ。トビ君は別に」
「嬉しいんスけど、ごめんなさい。僕あかねさんをそういう目で見れない…!!」
「……」
「あかねさん泣かないで下さい…!」
泣いてねえよ。しかもなんでフラれたみたいになってるの。は。
くう、と拳を震わせるトビ君は本当に申し訳なさそうに言うがとてもじゃないが泣けない泣くわけがない。
第一私トビ君をそういう目で見たことがないし。煩い人とかそういう目で見れないし。
「違う、違うから。私の好みはもっと静かな人で落ち着いてて…」
「え?あかねさんもしかして…」
…今度はなに。
呆れそうになりながらもトビ君がわざとらしく身を乗り出しどこかを見ている。
一体なんだ、と私もそちらに視線を向ける。
そこにいたのは角都さんとイタチさん。
…。
「…そうか、悪いがあかね」
「俺も悪いが」
「……」
だからなんでフラれたみたいになってんの私。
え、いつ告白した。私がいつこの人たちに告白した。は、なにこれ、まじなんなの。
「……だから、そもそも私普通の人がいいです」
「だって今静かで落ち着いてる人って」
「だから、もう、おまえ…!」
「まぁ、そうだな。あと10年くらいしたら考えてやろう」
「団子を作れるようになったら考えてやる」
だからちがう…!
そのあとどれだけ説明してもトビ君は元から話通じないし角都さんとイタチさんは若干酔っ払ってるため話を理解してくれなかった。
一体なんなんだろう、私はただトビ君について素直に言っただけなのに。好みのタイプを言ってみただけなのに。
数日間トビ君にそのネタを引きずられたのは言うまでもない。ほんと死ね。
◎ある眠れない夜の話
(まさか小南ちゃんにまでそういうこと聞いてるんですか)
(まさか)
(あれはまた違う)
(…?どういう意味ですか)
(……)
どういう意味。
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ほんとすみませ…!
角都さんとイタチさんで晩酌ネタ(+トビ)
何かハプニングがあればなおさら良いとのことでしたが…私の文才ではこれがも…!
もうちょっと酔っ払った誰かが夢主にほにゅららしちゃうっていうネタもあったんですけど…も、ほんとすみませ…!
神明様、苦情お待ちしております
ヽ(;´・ω・)ノ