乙ゲー
□1:せーぶでーたをつくりますか?
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これは夢かな。
周りの景色がいつもより低く流れていきながら今の状況を分析する。
私は、死んだ。
あの黒いてかてかの外車に轢かれて即御陀仏したはず。凄い痛かったし。
なのに今私は何をしているんだろうか。足があるし手をあるし呼吸も出来る。生きている。
視界もクリアに広がっているしすんと鼻を鳴らせば山の澄んだ空気が美味しい。目もあるし鼻もあし口にもある。
どういうことなのか。
でも一番分からないのは、
「ひいっ」
ぐさ、と木の幹に刺さったクナイ。
目前に通ったそれに思わず腰をぬかしへなへなと倒れ込む。
「追いかけっこは終わりか?坊や」
だ、誰だよもう。
びびりながらも背後を見れば、そこには全身黒装束の妖しい男。
先ほどから私を追いかけてきていた知らないおっさんだ。
コスプレみたいな格好に不思議そうな表情をすれば男はゆったりと近付いてきて、私の腹を軽く蹴った。
「痛!」
「坊や、何者だ?」
「は、はぁ?」
意味が分からない。何者って。しかも坊やって、失礼なだこの人。私は女だ。
「とぼけるな。ここは危険区域だぞ、こんなとこにガキがいるワケねぇだろ」
男が言う言葉も理解できないしますます困惑する私に別の男がもう1人木から降り立って言った。
「おい、どうするんだそのガキ」
「もしかしたら敵の一員かもな」
「そのガキがか?」
「馬鹿、見た目は変化でどうとでもなる」
2人共同じような格好をしており怪しさは満点。
一体何なのか、わけが分からないと思いつつ視線を巡らせれば。
…あれ。
ふと気づく。その2人が額に付けているものを。
ナルトでみんなが付けていた木の葉の額当てにそっくりだった。
いや、むしろそのまんまだった。
ヤフオクとかで売っているのを前見かけたが、そういう部類の物なのか。
それとも、まさか夢小説でありがちなトリップとかじゃないよな。ありえない考えに苦笑が浮かぶ。
そしたら突然襟元を乱暴に掴まれ息が苦しくなった。
「とりあえず捕虜として連れ帰るか」
「荷物になるじゃねぇか」
「軽いぜ、持つ?」
「遠慮しとく」
…なんか、え?
持ち上げられてるよ私。
「え、ちょ、なにするんですか」
「あ?暴れんな」
いや暴れる気はまったくないのだが。
それでも自体が飲み込めないのは相変わらず。
きょどる私など気にせず男は木に飛び乗り枝から枝へと飛び走り始めた。
「うわっ、お、おちる!」
ゆらゆらと揺れる体に思わず悲鳴をあげれば、ふと気づいた。
視界に入る私の体、何かおかしくはないだろうか。
手足が短い気がする。
服も、私が死んだ時来ていた可愛らしいスカートではなく男の子がはくような半ズボンに赤いTシャツ。
どう見たっておかしい、と自身の体を触りまくる。…超やわらけぇ。
手も足もなんかぷにぷにしてるし、指なんてちっちゃくてやばい。
そのまま流れで顔にまで手を持ってけば、更に驚くことになる。
「何このかんしょく!」
「おい、何騒いでんだ」
「す、すみません…」
ほっぺたがぷにぷにしていてまるで餅のよう。
いや、餅よりもっと柔らかい。そうだ、マシュマロ。マシュマロに近い。
それに…髪の毛。肩くらいまであった髪の毛がばっさりと短くなっているのだ。
…ありえない、なんなの私の体。
困惑する私に、急に男2人は足を止めたもんだから振り子のように体が揺れて驚いた。
「な、むごぉ!」
「黙れ」
「おいおい、あれって、まさか」
抗議しようと口を開いたのだがすぐに男の手のひらが押し当てられた。なんなのさもう。