短編2

□ここにいるよ
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ふ、と夜中目が覚める。



ちくたくちくたく時計の針が鳴り響く暗い室内。物音もしない無音の世界で何故か突然目が覚めてしまった。

なんで目覚めちゃったんだろ、

ぼんやりとする頭で不思議に思いながら寝返りをうとうと体をよじらせたとき。



「…」



あれ。

体が動かない。

ていうか、なんか…腹に巻き付いてる。



おかしな違和感に首だけ後ろに向ければ、危ない危ない。

驚きで吹きそうになってしまった。



(と、トビくん…!)


何故か私のベットの中に彼がいた。

あれ、寝るとき私一人だったよね。こいつと寝た覚えないぞ。なのに何でいんの。
ついでに言えば腹に巻きついている違和感とかトビ君の腕が巻かれていただけのこと。
まるで逃げを許さないかのように密着する体と腕に口をぱくぱく動かしたが、彼はすうすうと寝息をたて眠っている。


一体いつの間に。全然気付かなかった。


ベットに人が入り込むだなんて普通気付きそうなのに気付かないだなんてよほど私が疎いのかそれとも忍の優れた能力というやつか。
どうにせよ心臓が煩い。これほどの密着、私は耐えられない。


「…と、トビくん」


小さく彼の名を呼ぶ。

起きているだなんて思っていない。けれどこの恥ずかしさに殺されてしまいそうでなんとなく名前を呼んだ。
…勿論答えは返ってこない。まったく、トビ君め。とんでもないサプライズありがとうくそいらない。
私の心臓を止める気か、心の中で苦々しく思いながらも寄り添う温度を引き剥がせないのは所詮惚れた弱みという。悲しい。


…くそ、寝るに寝れない。

これだったら気付かなきゃ良かったのに。


「、トビくんのあほ」


心臓、頼むから止まってくれ。明日も朝早いんだ、今の内に寝ないといけないんだ分かってくれ。
どきどきだなんて乙女思考、くしゃくしゃにしてくれ是非。


ほてる体温にため息をついたとき、腹に巻き付く腕がぎゅううと力を増した。



え、と驚きで目を見開く私に、彼は囁いた。



「…誰があほだ」

「と、トビ君。起きてたの?」

「寝ろ」



低い、脳に甘く痺れるお菓子な声。

2人きりのときたまに出してくれる私が大好きな声。


起きてたんだ、とか。
いつの間に、とか。
なんで、とか。

言いたいことはいっぱいあった。文句も多少なりにある。
なのにそのお菓子な甘い声にて私の口は何も言えなくなるのだ。なんという、不憫。


…まぁ、でも。

この腕がまるで束縛を意味しているようで私も悪い気はしない。

相変わらず心臓は煩いがその腕とお菓子な声で許してやろう、と私もそっと目を閉じた。


さぁ、寝る。
















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