こんびにぶっく
□8:木の葉学園と試合
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今日、木の葉と練習試合の日である。
練習試合と言っても木の葉と暁、力量が同等だと思われる2人と組み試合をして高め合うといったもので本当に選抜された代表選手同士が戦い勝敗を決めるというものではない。
私なんて暁剣道部の中で下の下だ。
強さの序列を数えれば確実に後ろから数えた方が早いだろう。
負けると分かって何故行かねばならないのだろうか、そう考えると憂鬱でしょうがない。行きたくないというのが正直なところ。
しかしペイン先輩に「絶対来い」と言われたからには行かねばならないだろう。
今日ばっかりはサボれないなぁと思いつつやって来れば。
「あれ、デイダラ君」
自転車置き場でもう剣道着を着ているデイダラ君がきょろきょろ辺を見回している。
一体何してるんだろう、とつい声をかければ彼の目がこちらに向きすぐ不機嫌そうに歪む。
「おせぇ」
「ごめん。何してるの?」
「木の葉学園の連中待ってんだよ。お前も早く着替えてこい、うん」
あれ、もう来んの?早いなぁと思いつつ私も中へ入ればもう先輩方は剣道着姿でちらほらおり、私も急がなきゃと思ったのだが。
視界に飛段先輩が入ってしまった。入った途端、かたまる。
…あの人は…!
「おーう、おせぇじゃねぇの」
「、おはようございます」
「あぁ、おはよー」
出来るだけ顔を合わせないように俯き気味に言えば飛段先輩はにやにや笑顔のまま近付いてきた。
うわ、来ないでよ。
「なんだぁ、どうした?」
「ちょ、来ないで下さいよそんな格好で」
「んん?」
慌てる私に相変わらずのにやけ面をやめず近づいてくる先輩。
何故私がこんなにも慌てているのか、飛段先輩がただ苦手で片付く話ではない。原因は彼の格好にある。
私の目前にまで来た飛段先輩に仕方なく視線を送れば、思わず顔を歪める。
飛段先輩の格好。
それは上半裸、下半身は袴をかなりずら下げたところで固定させているというふざけた格好であった。
「……なんですかその格好」
今から木の葉学園が来るというのにこの人は。
もうやだ、軽くセクハラだよこれ。
異性の体など見慣れていないのでつい気まずさを感じながら必死に見ないようにしていたのだが、飛段先輩はそんな私の様子を面白そうに見ている。
「どうだ、俺の筋肉」
「いいんじゃないですか」
「見てねぇくせに何言ってんだ、おら」
直視なんて出来るわけがない。なのに飛段先輩はそれを不満に思ったらしくわざわざ私の腕を掴み自身の筋肉に触れさせてきた。
もはやセクハラにしか思えない行動に当然焦る。無理、筋肉、え。
「ちょ、なな、え」
「いいだろ俺の美筋肉!」
「……」
良いわけがない。自身の筋肉に酔っている飛段先輩になんとも言えぬ気分になりながらチラリと見てみる。
…確かに腹筋が割れ綺麗な筋肉だなぁ、と柄にもなく思った。
思ったけれどやはり恥ずかしさもありすぐに手を無理やりはなす。
残念そうな顔をした飛段先輩だがこれはしょうがないだろう、ほんとにセクハラで訴えるぞ。
「上、着てくださいよ。それに袴ずれすぎじゃないですか」
「なんだ、先輩に意見すんのか」
「…」
そういうんじゃなくて…。
私の心情など少しも分かってくれない飛段先輩に困った、とあからさまに表情に出したのだが彼は気付かない。
依然にやにやと笑ったままでいる。こいつめ。
しかしそんなところに救世主が現れる。
「何をしているの?」
「小南先輩!」
私の憧れの大好きな先輩が微笑みながら私と飛段先輩の間に入ってきてくれた。
ああナイスタイミングです小南先輩大好き…!飛段先輩に決して向けることのないきらきらとした尊敬の眼差しを小南先輩に向ければ、飛段先輩は少し不機嫌そうに「あぁ?」と言った。
「後輩に俺の筋肉を見せてるだけだ。お前も触るかァ?」
「結構。あかね、早く着替えてらっしゃい。もう来るわよ」
ばっさり言い切る小南先輩。
やっぱこの人かっこいい…!つい私の口元も緩みながら「はい!」と元気にお返事して先輩の言った通り部室へと向かう。
早く着替えないと。もう皆着替え終わってる人ばっかだし、やばいやばい。
飛段先輩のせいで無駄な時間を使ってしまった。