フシトリオ番外編

□おとこ
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まさかデイダラ君がいるなんて、予想外だ。
ぼんやりとしていた頭も今ではデイダラ君のせいでスッキリしており、なんだか目が覚めた。うん、もう大丈夫だ。

気まずさを勝手に覚えながら視線をさ迷わせれば。


「風呂に用事合ったんじゃねぇのか。…それに、お前顔赤いぞ」


すっ、と、デイダラ君は手を伸ばしてきて私の額に触れた。熱を計ろうとしたであろうその仕草。だが、私にとっては予期せぬこと。


「…」

「夏のせいか?額熱持ってるぞ、うん」

「…」

「大丈夫かよあかね」

「…あ、うん、だいじょうぶ、です、はい」

「あ?なんだよその敬語」


敬語にもなるわ。裸の男の子がこんな近くにいたら好きじゃなくてもどきどきするだろう。どきどき?というか、ぎょぎょぎょ?みたいな。変な焦り。
あーやだやだ。私って結構乙女だよね。デイダラ君にどきどきするだなんて、死にたい。

今だ額に触れているデイダラ君の手をどかしながらなんとか私は笑顔を浮かべた。


「なんでもないよ、気にしないで」

「そうか?…まあいいけどお前さっきからオイラのこと見ないよな」

「え?」

「オイラが裸だから照れてんのかよ、うん」


くつり、と喉を鳴らし笑うデイダラ君。

きょとんとして彼の顔を見上げれば、口元にはにやりとした嫌な笑み、くっきりとした鎖骨、しっかりついた筋肉、普段見る子供っぽいデイダラ君の姿はそこにはなく、なんというか、男の色気をまとった、というか、その。


「…」


こい、つ。

カアアアと顔が一気に熱くなる。

なんだ、気付かれていたのか。鈍感な彼だから別に気付かれていないだろうと思っていたのだが、気付かれていたと分かった瞬間変な恥ずかしさがこみ上げてきた。


「…んなわけないじゃん。自惚れんな、デイダラ君の癖に」

「あ?じゃあオイラ直視出来るか?」

「出来ますー、余裕ですー」

「言ったなお前」


直視ぐらいなんだ。認めたらなんだか負けな気がして強がればデイダラ君は目を細め面白そうなものを見るかのような視線で私を見下した。絶対思ってない。絶対私をなめきってやがる。

それがなんだかむかついて眉間に皺を寄せデイダラ君を見る。しっかりと視界に入れる。


「…ほら、見れた」

「だな」

「デイダラ君自意識過剰なんだよ。まぁ筋肉こんなしっかりしてるとは思わなかったけど、でもそれだけで私が照れるだなんて…」


はん、と威張って笑えばデイダラ君はにやりとしていた表情を少しだけ歪ませつまらなさそうな顔をした。

私の態度が気に入らないらしい。それでも認めるのはなんだか嫌だったので、デイダラ君をガン見し続ければ。


(はぁ…筋肉しっかりしてるんだ。腹筋もあるし。腰も細い。筋肉あるのにこうきゅっとしてて、へぇ、凄いなぁ…)


視線を段々におろしていき、ついに腰に巻かれたタオルにいきつく。


ここで言っておく。別に私は健全だ。むっつりでもない。そういうことに興味がない。…とは言い切れないかもしれないが、とにかく健全そのもの。

だけどタオルを見た時にふと思った。


(…デイダラ君も、生えてるんだなぁ)


女っぽいというわけではない。しっかりとした男。でも髪の毛が長くて暁コートをすっぽりかぶった後ろ姿は女にも見えなくはない。タオルの中。

男の象徴としてあれが生えているんだろうなぁなんて何気なく考えてしまい、ついガン見していれば。


「…お前、どこガン見してんだよ…うん」

「え?」

「流石にそこガン見は、お前、うん…」


デイダラ君が少し困ったような声音で呟く。

ぽりぽりと頬をかき、気まずげに視線を斜め下に送る彼の姿を見て、私もハッとする。

…私は今、どこをガン見していたんだ。

それを自覚した時今度こそ全身がグオオオオと熱を帯びてくる。


「あ、ごめん!その、ガン見、」


してませんとは言い訳できない。それくらい見すぎたのだから。


「…しちゃった、」

「…しちゃったって、あかね」

「いやほんとごめん!ちが、ほんと違うから!」

「何がだよ」


何がだよ、と聞かれても困る。そんな、そこを見ていただなんて認めるのも恥ずかしい。


「…」

「…」

「…とりあえず、服着てくんない」

「あ、おう」

「…」


どこか変な空気が私達を包む中、デイダラ君は私の言葉でようやく服が置かれている場所までいく。タオルを手に取り、ごしごしと体を拭いていくのを見て、私もこっそりため息をついた。

やばいまた熱くなってきた。くっそ、そもそもデイダラ君がここにいなければ私は今頃シャワー浴びてスッキリしていただろうに。

ふつふつと湧いてくるデイダラ君への怒りはだんだんに増してきて無性に苛々していればデイダラ君は急いで着替えたらしい。しっかり服を身にまとったデイダラ君がこちらにまた戻ってきた。

やたらとスッキリしたような顔をしているのがなんだかまた腹がたって、私はデイダラ君の肩に向かって手を振り下ろした。

肩パンされたデイダラ君は一体何事、みたいな顔をしていたがそんなものしるか。まったく、ちくしょう、…あぁ熱い。やっぱ風呂入ろう。そうしよう。



「いってぇ、急になんだよ」

「私風呂入るから出てって」

「結局入るのかよ、うん」


デイダラ君のせいでまた熱くなったからね。とは言わず脱衣所からデイダラ君を追い出し私はようやく風呂に入れることになった。

よし、汗を洗い流そう。ついでにほてったこの体、冷水で冷やしてこよう。

出て行ったデイダラ君を確認して今度こそ服を脱ぐ。よし、冷水でスッキリするぞ。










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あつくてたまらんなぁ…ひぃ…
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