ギラリン長編小説〈青年編〉

□不安
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「…───?」




いつもは
心で呼び掛ければ直ぐに
傍に来てくれる
紅いロフトバードが、

先ほどから呼び掛けているにも
関わらず、全く姿を見せない事へ
疑問を感じたのは、


もうすぐ鳥の乗りの儀が
始まるという、そんな時だった…


どうしたのだろうか?


困惑しているとゼルダが
両肩に手を乗せてきた。

「…?」

「もうすぐ、鳥乗りの儀が始まるし…
少し準備運動したほうがいいわ」

言葉と共にすぐ近くの飛行場所へと
背中を押され、リンクは無理矢理足を止めた。
「ま、…待って、待ってゼルダ!」

必死な声にゼルダが眉をひそめた

「?…どうしたの…」

「ロフトバードを感じられないんだ」
押す力がなくなり
安堵してそう言ったのも束の間、
ゼルダは深いため息を吐いた

「またそんな…お父さんの話に乗っからないで!ふざけてるんじゃないんだから!」


ドンッと

背中を押された瞬間

嫌な浮遊感と共に視界が逆転する。

「う、ウワアアアあああ!!」

突然のことに軽くパニックを
起こしたリンクに飛行場の淵から
ゼルダが声をかけた。


「リンク!早くロフトバードを呼んで!」

「っ!」

その声に落ち着きをとりもどして
何とか体をひっくり返すと

思いっきり、


指笛を吹いた─────


透き通るような音が辺りに響く、


すると

紅いロフトバードが
何処からともなく飛んできて

かろやかにその背中でリンクを受け止める。


……筈だった


「!??」

何時までたっても

紅いロフトバードは現れない…




このままだと、雲海の中へ…

落ち、て…!!



───…あれ?……


前にも……こんな…


確か、…あのとき、は

悲鳴がたくさん、聞こえてて、…



『乱気流…だ!!まず……早……戻れ!!』


『…──ァ─ン…早くこっちに!!』

乱気流が起きたから
危ないから
逃げなきゃって…

だけど僕はあの時…─────


「リンク!!掴まって!!」


ゼルダがロフトバードに乗り、
素早く急降下するのが見えた。


「っ!!ゼルダ!」



なんとか、ゼルダの青い
ロフトバードがその足でリンクの
体を掴み、スカイロフトへと上昇した…

倒れ込むように着地して、

ゼルダはロフトバードの背中から
慌てて降り、心配そうに
此方をみた。

「大丈夫?!」

「うん、なんとか」

苦笑しながら起き上がって
土埃を払うリンクに
安心したのかゼルダの表情が緩む…が
直ぐに申し訳なさそうに
眉をハの字に歪めた

「…ごめんなさい…本当だったのね、ロフトバードを感じられないって…」

「良いよゼルダは悪くない………
あのさ…前にも、…」
こんなことなかった?
そういいかけて、

突然耳に飛び込んできた音に
顔を上げれば、

鳥乗りの儀の開催合図の
花火、だった…

「ど、どうしようゼルダ!」

サッと青ざめてリンクが言うと
素早くたちあがってゼルダも
不安な表情を浮かべ、口を開いた。
「私はお父さんとアウール先生に
相談してくるわ、貴方はその間に
ロフトバードを探して!!」


「う、うん!」

答えて、校舎の方向へ走っていく姿を
見送るとリンクも広場の方へ走り出した


とりあえずスカイロフトの人達に聞いてみよう

何か、分かるかもしれない…

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