ギラリン長編小説〈青年編〉

□であい
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(過去sideゼルダ)




嵐の夜から

三日ほど後のことだ

あの子は、寮の空いている部屋に
寝かせられていて

時々その部屋へお父さんが
何度か様子を見に来ている…


部屋へ入ってはいけないと
言われていたけれど


お父さんに隠れて
私は何度もその部屋へ
足を運んでいた…



小さい頃からこの騎士学校にいて
まだ同年代の友達がいなかった私は
どんな子なんだろうと
凄く興味を持っていて、
あの男の子と友達になりたかった
だからその日も
ドキドキしながら扉を開いて
部屋へ入ったのだけれど

見渡した瞬間

「あっ…」と、思わず声をあげた


それというのも
寝ているはずの茶金髪の男の子が
上半身を起こしてぼんやりと
外を眺めていたからだ。


どうしようかと、思考を
働かせているうちに
男の子が此方にきがついたのか、
視線がぴったりと重なってしまった。



なんて、声をかけよう…

おはよう?
それとも、
はじめまして?

迷っている間に

男の子の真っ青な瞳から
水滴がこぼれ、小さな音ををたてて
シーツにしみこんだ。

それでようやく

目の前の少年が泣いている事に
きがついて、思考が止まる…

「……っ!」

声をかけなければ、とそう考えついたのは

無意識に手を離していた扉が
大きな音を立てた時だった



「…なんで、ないてるの?」

質問をしてみたが、

何を考えているのか分からない
空っぽな瞳で此方を見返してくるだけで、

無表情な少年が少し怖かったが
勇気を出してゆっくり、近づいた…

「…貴方、…何処からきたの?」

その質問に少年は
視線を落としただけで
何も答えなかった。

「…名前は?」

唐突に、

「分からない」
そう言って悲しそうに
胸元の服を強く握りしめ、

「何にも、おもいだせない。」

まるで、今までの無表情が
嘘だったかのように

表情を歪める男の子に

驚いたけれど

急に心を締め付けられるような、
そんな、感覚に襲われた…



「なんでかな…」

言葉と共に再び此方を
見つめ返したその瞳は、
まだ濡れたままで、

「…涙がとまらない…」

酷く寂しげに
呟いた男の子は

なんだか

お母さんがいなくなって
しまったときの私に、
似ている気がして…



「…涙が止まるまで側にいてあげる。」

私が守ってあげなくちゃって…

そう、思った…






「…ルダ…」



「…え?」



「ゼルダってば!」

その声に振り向くと

リンクが目の前にいて、

びっくりしたゼルダは
悲鳴をあげかけた…

すると慌ててリンクが
距離をとって困ったように笑った
「…ご、ごめん驚かせた?
ゼルダが珍しくぼーっとしてるから…心配になって」

あの頃とは全く別人のような、

強くて青い瞳が此方をみつめてくる…


「ううんごめんなさい……思い出してたの、あなたと初めて話した時のこと…」

「初めて?…何、話したかなぁ……」

あんまり覚えてないや、

そう言ってリンクは笑った。

最近気が付いたのだけれど


…リンク、は



あの頃の記憶が
曖昧になっているみたい…

あのあと、

思い出せないけど
誰か、逢いたい人がいると

その人との繋がりだけは
忘れたくないと泣いていた貴方に

また逢えるといいね、って


私が名前をあげた事すら、


貴方は、




覚えていない……

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