ギラリン長編小説〈青年編〉

□夢
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見たことのないもの…

たとえば、ロフトバードよりも小さな鳥や

不思議な生き物達

スカイロフトではみたことのない
大き過ぎる、大樹


見渡す限り何処までも続く広い荒野


それらが当たり前に存在している


まるで伝説にある

『大地』という場所のような…

そんな有り得ない場所で

子供の姿になった僕は、
誰かを待っているのだ


『リンク、』

声が、聞こえて振り返ると
穏やかな景色はボロボロと
足元から崩れ、その姿を消した


代わりに、真っ黒な闇が訪れる…



これは夢だ



黒に包まれてハッキリとそう気がついた。



『リンク…』

ハッとして
眼前に果てしなく広がる
暗闇に目を凝らしたが


…何も、…見えない…

「─────……だれ?」



最早闇に包まれ、
上も下も分からないが

足元から、突然

地鳴りが……いや、これは



「唸り声、だ…」

強い憎しみと怒りを含んだ唸り声…



その声に、全身の毛が逆立つ

『リンク…』

青い光が差し込んで
思わず目をつぶった


何度も自分の名を呼ぶ声は

今も聞こえ続ける唸り声とは

全く違う……何処か、
神聖さを感じる…

『リンク』

声に瞳を開くと



闇色の鱗に全身を覆われた怪物が
鋭い牙を光らせその巨体を表にしていた。



先程から唸り声を発していたのは

あれだ、

何故、今まであんなものが足元に
いることに気がつかなかったのだろう

怖い、逃げ出したい、



でも、


まるで足が空中に
縫い止められてしまったように

動かない、

怖い怖い怖い…

頭の中で警報が鳴り響く、
どうにかしてあれから離れなければ



『目覚めの時が、来ました』

目、覚め?

恐怖に塗り潰された頭が、

思考を止める


そうだこれは夢だ、

夢なのだ、

恐れることなんてないじゃないか

目覚めてしまえば…

安堵した瞬間

青い光が



ズグ、と嫌な音を立て、


リンクの体から


赤い液体を滴らせた




痛い

なんで?夢、なのに、

「…!!?」

なんでこんなに痛い…?

それに




酷く悲しい


涙が


止まらない

『リンク…』

誰?


「ッ誰…、だ、よ…」


胸に突き刺さったそれは

綺麗な…白い刀身を持つ、




正常に働かない頭は

ぐちゃぐちゃになって

でも、

何かを思い出せそうな、


違和感、



強い違和感に、



たどりついた、



あれ?、


なんで?


誰?



リンクって、誰?


僕は、




僕は

僕 の 名 前 は、



『リンク、目覚めの時がきたのです』


「僕は「キュイイ!!!」

気がつくと
見なれた木枠の天井に、
突然目の前に現れた大きな嘴

「う、ウワアアアアア!!」
驚いて叫び声を上げ、慌てて
起き上がろうとすれば
シーツに腕が絡み

情けなく、ドスンとリンクは
ベッドから転がり落ちた。

「ッ…ぃててて、…あ、お前…」


よく見ると窓枠から
顔を出したのはロフトバードで、
声をかけようとしたが、
顔に飛んできた手紙のせいで
言葉を阻まれる


ゆっくりと顔から剥がれ、
地面へ落下した手紙へ
視線をおくると、どうやら
「…ゼルダから?」

そう、ゼルダからだった。
中身には

女神像の前に来て欲しい
そうかかれていた。

もしかして

昨日言っていたものが
完成したのだろうか?

たちあがろうとして、

胸にある傷跡にずきりと鋭い
痛みを感じ、動きを止めた…

「痛ッ……」



───変な、

夢…をみた気がする

酷く嫌な夢だった。

もうほとんど思い出せないが…


あの怪物は…?


「なにやってるんだい!セバスン!
早く樽を持ってきとくれ!」

突然、

扉の向こうから聞こえた
慌ただしい声に

今日は鳥乗りの儀だということを
思い出す。

しまった、


どうしよう、…緊張、する…

いや、そんなことよりも


今はとりあえず、ゼルダに
会いにいかなくちゃ!



慌てて着替えを済ませ、
リンクは部屋から飛び出した

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