ギラリン長編小説〈少年編〉
□孤独
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(sideギラヒム)
魔族とは違い。人間は脆弱だ。
こんな怪我ごときで
死んでまう。
ましてや、子供なんて下手をすれば
蹴飛ばすだけで即死だ。
「フム、丁寧にあつかわないとね。」
感慨深げにギラヒムは独特の形をした
魔力の結晶で止血してやる。
。
怪我事態は小さいが、深い。
「助かるかどうかは運次第だな…
さて、あとは安全な場所、か。」
少し考えてからギラヒムは
指を鳴らした。
すると、森は消え、
かわりに薄暗い神殿
のような場所が現れた。
「あまり戻りたくは
なかったが、…仕方ない、か。」
神殿は半壊している。
円形のホールのような神殿の
中央には台座があった。
数年前まで
あそこには剣が刺さっていた。
ただの、剣ではない。
主を失った魔剣が、
そこに封印されていた。
「……」
此所を訪れる度に、嫌でも思い出す
『マスター…マスター…』
幾度呼び掛けても、
返答はない。
そもそも承認が解かれている。
『マイマスター…』
ハイリアの力からマスターを、
守る事が出来なかった。
失って、しまった。
俺を扱える使い手を、
失ってしまった。
もう共に戦う事は出来ないのか、
剣としてあの方に振るわれる事は
───ないのか?
理解した瞬間、突然襲う
突き刺さるような感情。
何だ、この、感情、は?
剣として生まれてから、
喜びしか感じなかった俺には
その感情が解らない。
ただ、
胸に空洞が出来てしまったような…
酷く嫌な感情だ。
「クシュン!」
はっとして我に帰る
どうやら
少年がくしゃみをしたようだ。
「……そういえば、
人は寒さにも弱かったな…」
ふと、思い出した知識に、首をかしげると、ギラヒムは意識のない少年に身に付けていたマントを、掛けてやった。