ギラリン長編小説〈少年編〉

□転落
1ページ/1ページ


(side イアン)


訓練中の出来事だった。
突然乱気流に飲まれたのだ、
他の生徒の悲鳴が聞こえる中、
イアンは強烈な突風によって
ロフトバードから引き剥がされ

一人、雲海へと落ちていった。


風圧で呼吸が出来ず


意識が遠ざかる…








どのくらい気絶していたのだろうか

ひどい傷みに襲われて
イアンは呻き、目を覚ました。



落ちてきた時、脇腹を傷つけたのか、服が赤く染まっている。

ひどく寒い


「こ、こは?…」

見上げると見たことのないくらい大きな木が、辺り一面を囲んでいた。
なんとか立ち上がる。

きっと雲海の中にある島に落ちたんだ、

助けを呼ばなくちゃ、

何度もロフトバードに呼びかけたが

相棒の紅いロフトバードが来ることはなかった。

同じような景色が、ひたすら続く。

このまま死んでしまうのだろうかと
不安と恐怖が何度も頭の中でよぎったが足を止めることはしなかった。

暫くふらふらと覚束ない足取りで
歩いていると


小さな丸い生き物が
もぞもぞと動いているのを見つけた。

「?…」
初めて見るその生き物は、
頭に草を生やし背中に
コブがついていた。

「変なにおいだキュ…怖いキュ」

どうやら言葉を話しているようだ。

人ではなかったが、
なりふりかまってはいられない。
「あ、の…」


「キュ!?キュキュ〜!!」
声をかけたのだがその生き物は
驚いてどこかに走り去ってしまった。

「…っ…どうしよう…」

どっと木に寄りかかった。
もう限界だ、

目を開けているのも億劫になる。

ずるずるとそのままへたり込んだ

でも、こんなとこで死にたくない。
必死に意識を保とうとしていると


…いつの間にか
イアンよりもずっと背の高い人が、
此方を興味深げにみていた。

誰、だろう。

白い髪なんて始めてみた。
森の中には似つかわしくない
小綺麗な格好をしているきがした。

ぼんやりと目の前に現れた
人物を眺めていると不意に
真っ黒い瞳と視線が絡む


「誰、?」


聞こえただろうか、
息を吐くような
かすれた声で問うと、
首をかしげた後
ニッコリと、笑った。

「なあに、君の命の恩人さ!」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ