ギラリン長編小説〈少年編〉

□森の噂
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何やら森がさわがしい。

ざわざわと飛び交う会話に
魔剣、ギラヒムは木の上から
戯れに耳を傾けてみることにした。

「怖いキュ〜」

この特徴的な声は女神の僕の中でも
臆病な亜人、キュイ族だったはずだ。
「落ちてきたんだキュ!
オイラ見たんだキュ!!」

そう言って一匹が空を見上げる。
「空から!…でも、なんだか
怪我してたみたいだったキュ〜」

空から…落ちてきた?
珍しく心をひかれる内容だ、と
ギラヒムは身を起こした。

「あんなに高い所から
落ちてきたんだキュ…!手当てしないと死んじゃうキュ!!」

空といえばあの女神、
確か空に人を逃がしたと聞く…

「やめるんだキュ!魔物だったら
どうするんだキュ〜!!」
一匹が
バタン、と地面に倒れ込み
草へと擬態する。ガタガタと震えている様からすると怯えているようだ。

「……じゃあ………止めるキュ…」
すこしばかり心残りなのか森の奥を
ちらりと眺めた後、キュイ族達は
住処へと走り去った。
残されたギラヒムは
顎にてを当て、少し首をかしげた。

「ふぅん………………森の奥…か、
行ってみる価値がありそうな
情報だな…」

パチンッと彼が指を鳴らすと

金属と金属が衝突したような音が
周囲に響き渡り、

ギラヒムの姿はあっという間に
そこから消えてしまった。

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