「せ、センパイ!す、す…しゅきっす!付き合ってください!」
「お、おう…ありがとな…俺もだ…」
告白などされることはあってもすることは今までしたことはなかった。二人共顔真っ赤で恥ずかしくて倒れそうだったけれど、照れながら返事を返してもらえてすごく嬉しかった。
だから付き合えてすごく幸せだった。
「セーンパイ!お待たせしましたッス!」
「おう、じゃ帰るか」
「はい!」
部活を終えて着替えて出てくる黄瀬と共に俺は学校を後にした。主将として戸締りをするから必然的に俺が最後のなるんだが、黄瀬はいつでも待っている。しかも毎回俺より後に出てくるようしていて、正直腹が立つ。
だがそれがいつも嬉しかったりするんだ。
「センパイセンパイ!今日の俺どうでした?」
「あー…普通じゃね。てかあそこでダンクするんじゃなくてパスしろっていつも言ってんだろ!シバくぞ!」
「もうシバいてるッス!」
いつもの様にシバいちまったが、実際最近の黄瀬は調子がよくて驚いているのは本当だ。スピードも正確性も上がっていて、十分な戦力になっている。でもそれを素直に褒めるなんて今の俺には出来ねぇ。
「もー…笠松センパイ照れ隠しが痛いッスよー」
「黄瀬ぇ…もっかいシバかれてぇか?」
「遠慮するッス!」
黄瀬はそんな俺をす、好きだって言ってくる。だけど俺にはそんなこと言えねぇから、どうにか伝えれねぇか悩んでるんだが…やられっぱなしは好きじゃねぇ。だから俺に出来ることをすることにした。
「お、おい!黄瀬!」
「なんすか?」
「あ、のな…えっと…」
「センパイ?」
足を止めて黙っちまった俺を心配して覗きこんでくる黄瀬が犬みたいに可愛くて、俺はつい顔を背けてその頭を掴んで荒っぽく撫でちまった。
俺のなで方も嫌うわけもなく、何するんスかって言って黄瀬は笑っていた。それでいいのかって思ったけど、なんか違うと思ってたんだが…れ、恋愛なんてしたことねぇ俺にはわからねぇし、今日はこれで帰ることになった。
「あの…笠松センパイ、お願いあるんスけどいいっスか?」
「なんだよ、改まって…」
「だって…たぶんいきなりしたらセンパイ俺のことシバくかなぁって思ったから」
「あ?とりあえず言ってみろ」
俺達はまたしばらくくだらない話をしながら歩いていたんだが、黄瀬のためらいがちに笑いながら言ってくるもんで、俺は不思議になって聞いてみることにした。俺がシバくようなことしようとしたのなら、遠慮なくシバくけどな。
「あのッスね、手を繋ぎたいんス」
「は?」
「だから手!手を繋いで歩きたいんス!」
黄瀬が少し頬を赤めながら言ってくることが俺は理解できなくて、しばらく固まっちまって理解できた時には俺は全身熱くなってた。
反射的に黄瀬をシバキそうになったが、黄瀬も相当赤くなっててするにできなくて、俺達の間に変な空気が流れた。
そんな時だった。
「す、スンマセン!なんか俺先走って!」
「や、ま…」
「あ!俺そこの自販機でジュース買ってきますね!センパイここで待っててください!!」
「お、おい…」
俺が止めるのも聞かず、黄瀬は少し離れた自販機まで走って行きやがった。お前が恥ずかしいのもわかるが言われた俺も恥ずかしいんだっての。でも黄瀬がしたいことがわかった…が俺に出来るわけもねぇ。
そんなこと考えていたらいつの間にか黄瀬が帰ってきていて俺の目の前にポカリを差し出してきた。
「はい、どうぞッス」
「あ、ワリィ。金払うわ」
「いいっすよ!俺の奢りっス!笠松センパイの好きなのわかんなかったから無難にそれになったスけどいいッスか?」
「ん…サンキュ」
ここでなんか討論になるのも嫌だったから今は素直に受け取った。けど俺の頬からまだ熱は抜けていなくて、少し視線を合わせられなかったけど、また楽しそうに話してくる黄瀬が居て俺は無意識に黄瀬に手を差し出した。
「ほら」
「え…センパイ…?」
「繋ぐんだろうが、早くしねぇと帰るぞ!」
「わ!待って!繋ぎます!繋ぐっすから!」
黄瀬は慌てて俺の手を握ってきた。あまりの慌てっぷりに笑っちまったけどてか伝わる黄瀬の熱に俺はせっかく熱の引いた頬にまた熱が集まりだして、手を離しかけたが黄瀬が握っていたため繋いだ手は離れることなくそのままだった。
「センパイ…逃げちゃダメっす」
「う、うるせぇっ…恥ずいんだよ、馬鹿」
「へへ…センパイの手、俺より小さいんすね」
「これでもデカイ方だ!お前がデカイんだよ!」
「そうっすね、俺の全部はセンパイを包むためにあるんすよね」
「は?…うわっ!」
黄瀬がわけの分からないこと言って俺は反応しようとしたが、繋いでいた手を引かれて俺はそのまま黄瀬の腕の中に放り込まれた。
その時聞こえたのは早い黄瀬の心臓の音と黄瀬の声だった。
「センパイ…好きッス…」
「き、せ…」
「センパイが大好き」
「っ…お…俺も、お前が、す…き…だから…」
顔が見えないことと黄瀬のぬくもりにほだされたのか、俺はさっきまで言えなかった言葉を言っていた。言った瞬間黄瀬の鼓動が早くなるのが聞こえて、顔を見ようと思って上を向いたら頬が赤くなっている黄瀬が俺を見ていて、そんな顔で笑うもんだから俺も釣られてまた赤くなってしまった。
「こ、こっち見んな!馬鹿黄瀬っ!」
「嫌ッス…今日はすごい日ッス、センパイから聞けるなんて」
「るせぇ…黄瀬…」
「なんすか?」
「顔赤ぇのに気取ってもなんもなんねぇぜ?」
「っ!それはセンパイもじゃないっすか!」
俺達は頬に熱をもたせたまま、抱き合っていつものように言い合いしていた。けどそれもしばらくすれば熱も引いて、慣れちまった。
俺はさすがに遅くなると思って黄瀬に帰るように言うと黄瀬がおもむろに俺の顎を掴むと強引に俺を上に向けて、あろうことかキスをしてきた。
「んっ…!?」
「っ…ふ…」
ただ触れるだけのキスだけど妙に恥ずかしくなって俺は繋いでいる黄瀬の手を強く握り、空いている手で黄瀬の制服を握った。そうでもしないと恥ずかしくて立っていられなかったからだ。
触れるだけのキスは離れてはまた角度を変えてされて、挙げ句の果てには額や頬にまでされて俺はもう黙っていられなくて声を上げた。
「きせぇ…!」
「え、センパイ…なに?」
「なにじゃ、ねぇ…!俺の心臓壊す気かっ!」
「あ……」
俺の状態を見てようやく気がついたのか、黄瀬は俺を支えるようにして抱きしめてきた。いつもなら抵抗するんだが、今の俺にはそれは出来ずただ落ち着くまで黄瀬に頼った。
「笠松センパイ、すみません…」
「……」
「センパイ見てたらとまんなくて、つい…」
「……はぁ、次は気をつけろよ…俺だって、恥ずいんだから…な…」
「笠松センパイ…わかりました!」
そしてなんとか落ち着きを取り戻した俺はまた黄瀬に手を繋がれ、家の近くまで手をつないだまま帰ることにした。
今日はいろんなことが初めてで心臓に悪くて仕方なかったが、黄瀬の気持ちや思いがわかってよかった。俺も…自分の気持がわかってなんか、幸せだった。こんな日がずっと続くといいなって…柄にもなく思っちまった。
紫紺さまに黄笠を頂いてしまいました!本当っもう可愛い!「初々しい黄笠で」という突然の無茶ブリにこんなに素敵な黄笠を頂けるなんて。・゚・(ノД`)・゚・。 ありがとうございます!家宝です!!
イラストは僭越ながら私が描かせていただきました。少しでも小説の雰囲気が伝わる幸せな黄笠になっていればいいな。