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□すきにならないワケがない。
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万事屋の応接室にて、全国指名手配中のテロリスト、桂小太郎はお茶を飲んでいた。
いつものごとく、万事屋の主を勧誘にきたのだが、あいにくの不在だった。
せっかく来たのだからというコトで、留守番を任されていた新八がお茶を出したのだ。
そんなワケで、差し向かいでお茶を飲みながら、新八が口を開いた。
『そういえば、桂さんと銀さんて、幼なじみなんですよね?』
『ああ、付き合いはだいぶ長いな。』
『銀さんて、普段から自分でモテないモテない言ってますけど、昔からモテないんですか?』
『何を言うかと思えば…、銀時がモテないなんて、…そんなコトあるわけなかろう。』
『ですよね〜…って、ええ!?モテないワケがないって、銀さんはモテるってコトですか!?』
予想外の答えに、新八は驚き、身を乗り出した。
『モテるに決まってるではないか、考えてもみろ、仮にもヤツは白夜叉とまで呼ばれた伝説の男だぞ。』
『…ああ、そう言われてみればそうですよね。じゃあ何でモテないなんて…』
ニヤリと不敵な笑みを見せ、桂は言う
『それはだな、ヤツは自分がモテないと思い込んでいるからだ。そのように俺と高杉が思い込ませたからな。』
『え〜〜〜ッッッ!?なんでですか〜〜〜!?!?』
『だって、全然知らないヤツに銀時をとられるの嫌だったんだもん。』
テへっ☆っと、舌を出して自分で自分のアタマを小突いてみせる。
『ウザっ!!じゃなくて、じゃあ銀さんて、ホントはモテるんですか?』
『モテモテだ。では逆に聞くが、ヤツに関わって、ヤツの魂に触れて、ヤツを嫌いという人間がいるか?』
一転、真面目な顔で問われる。
なるほど、そう言われればそうだ。嫌いどころか、好きにならないワケがない。
『あれ?でもじゃあ高杉さんは?銀さんを嫌いなんじゃ…』
『アイツは極端すぎるんだ。銀時が手元にないなら、いっそ消してしまえ、みたいな考え方だ。基本は銀時のコト大好きだぞ。』
『え〜〜〜!?なんですかその歪んだ愛情。』
『そうだ、アイツはだいぶ歪んでいるからな。』
うんうんと頷きながら言う。
『それで、どうやって銀さんに「モテない」って思い込ませたんですか?』
またしても、ニヤリとしながら
『それはまあいろいろとな。俺と高杉が組めば、たいていの謀は成就するからな。』
しれっと恐ろしいコトをのたまう。
『まあ、今となっては名実ともにまるでモテないダメなオッサンだからな、俺たちの努力が報われたというワケだ。あははははははは。』
『ひどすぎじゃないですかー!!!それじゃあ銀さんが哀れすぎます!!!』
あれ、涙が…と、目頭をおさえる新八。
すると、高笑いを続けていた桂が、不意に真面目な顔になって言った。
『…アイツは、受け入れることは出来なくても、全て受け止めようとするんだ…。』
『え?』
遠い眼をしながら、少し苦い顔をして、先程までとは違う絞り出すような声で続けた。
『あの頃は、常に死と隣合わせの毎日だったんだ。そんな中で、圧倒的な強さと美しさを誇る白夜叉は羨望と憧憬の的だった。実際、その想いを伝えようとする者も数多くいた。』
眉間にしわを寄せ、目を閉じ、溜め息混じりにつぶやく。
『アイツは…、銀時は、その寄せられた想いを、全てこころに留めるんだ。その命が失われれば、守ってやれなかったと己を責めるんだ。それも、誰に言うこともなく、ただ一人で、己のこころを斬り続けるんだ………。』
とても、見ていられたものではなかった…
そう言って、沈黙した。