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□ふわふわ。
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まだ夜も明け切らぬ時分、眠りの静寂につつまれていた万事屋にその声は響いた。




『だ〜〜〜ん〜〜〜な〜〜〜っっっ!!』




声の主は、泣く子も黙る、真選組の一番隊隊長沖田総悟。


鍵の掛かった扉を蹴破り、大声をあげて突入し、一直線で家主の眠る和室へ飛び込む。


かなりの騒音のハズなのに、寝汚い家人2人と1匹、ものともせずに睡眠続行中。



沖田は、そんな眠りの中にある家主こと、万事屋銀ちゃんオーナーである坂田銀時をじっと見つめたかと思いきや、その布団に飛びついた。



『おおお!?なに?なに?なに???』



その衝撃に、さすがに目覚めた銀時だが、なにせ寝起きなので、全く状況がわからない。

とりあえず起き上がろうとするが、身動きすら出来ない。



『なに?なんで動けない?金縛り?金縛りなのかコレは?うお〜!!!い〜〜〜や〜〜〜だ〜〜〜!!!』



軽くパニックに陥りそうになった瞬間、声が聞こえた。




『や〜っと捕まえやしたぜェ、旦那。』



『え?沖田くん?なに?なんでいるの?てゆかなにこの状況?え?なに?銀さん襲われてる?なに?なに?なんなの?』

『旦那、うるせぇです。眠れないじゃねぇですか。』



『えええ!?寝るの?ここで?この状態で?意味分かんないんですけど!てゆか説明しろやコラ!!』



言い募る銀時に、沖田はさらに強く抱きついて、その髪に顔を埋めながら話し始めた。



『なかなか寝付けなかったんで、オーソドックスに羊を数えてみたんでさぁ。』



『へえ〜、結構カワイイことするね。』



『いや、大概土方さんの死体を数えてるんですが、ちょっと飽きたんで。』



『…ああ、そうなんだ………。』



『そしたら最初まっ白だった羊が、ふわふわの銀色になってきて、逃げ出したんでさぁ。で、その銀色が、旦那の顔で「眠りたかったら捕まえてみろや〜。」って言いやがったんでィ。』



抱きつく腕が一瞬さらに強くなる。



『ぐぇぇぇ…それ銀さんじゃないから、銀さん悪くないから、首締めんな!』



『そう言って、全部どこかに走り去って、全く見つからないんでさぁ。それで、確かここにひとつ居たはずだと思ってきてみやした。そしたらやっぱりいたんで、寝ます。おやすみなせぇ…』


『…なんだそりゃ。………まあいいや、勝手に寝ろや。でもとりあえず、腕離せ。苦しい。』



『…なにいってやがんでィ……。捕まえたら…その銀のふわふわ枕にして寝るって…約束したじゃあねえですかィ………。』



『…その約束したの俺じゃないからね。って、寝てるし…。』




どーしたもんかな〜と思っても、やっぱり全く動けないから仕方ない。


すっかり眠ってしまった沖田に、布団をかけてあげられないのが若干気がかりだけど、それもまた仕方ない。


いつもの、人をバカにしたようなアイマスクをしていない寝顔が見られないのは少し残念だけど、それもまた仕方ない。



耳元に、規則正しい寝息を聞きながら、そんなコトを考えていたら、また眠気の波がやってきた…。



目が覚めたらきっと面倒くさいコトになってるだろうな〜…と思ったのを最後に、意識が途絶えた。



………………………………………



すっかり日も昇り、再び目覚めた時、沖田はもういなかった。



『…なんだかねぇ………。』



しがみつかれたままだった為、凝り固まった体をほぐしながら応接室に行くと…。


テーブルの上に、二枚の紙が置かれていた。


一枚目は新八からで、



「場をわきまえろ淫行侍!神楽ちゃんは置いておけないので連れていきます。お世話になりました。 新八」



『あああ…やっぱり面倒くさいコトになってやがる。つーか起こせよな〜。』



二枚目は沖田から



「素晴らしい安眠枕でした。また使わせてもらいに行きやす。 沖田」



『…なんだかねぇ………。』





まあいいか、と、寝起きのいちご牛乳を飲みながら、現実逃避を決め込むコトに決定してみた。


面倒くさいコトはいっぱいだけど、なんとなく面白いコトもあるもんだ、と、ちょっと楽しくて、羊じゃないけどふわふわな気持ちになった。








end。

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