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□似た花の意味。
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今日も今日とて、仕事を抜け出し俺は万事屋に来ている。
メガネとチャイナの気配が無いのを確認し、勝手に上がり込んで、勝手に旦那が昼寝をしているソファの向かい側に座る。
いわゆる『旦那鑑賞』ってヤツだ。
しかしながら、残念なコトに、今日はジャンプを顔に伏せている。
でも、ま、いっかと思い、いつものようにぼ〜っと旦那を見ていた。
しばらくそうしていると、なんの前ぶれもなく、旦那が起き上がった。
そして、こちらを向いておもむろに口をひらいた。
『沖田くんはさ、ギンリョウソウって知ってる?』
『………ギン…?なんですかぃそりゃあ?』
唐突に聞かされた言葉はまったく聞き覚えのないもので、尚且つ、ぼ〜っとしていたトコロに不意打ちできた為、聞き取るコトすらできなかった。
『ギンリョウソウ。…花の名前なんだとさ。』
『…ギンリョウソウ…ですか…。聞いたコトねーですねぇ。』
ギンリョウソウとかいう花も気になるけれど、起き抜けに突然それを聞いてきた理由も気になる。
『それは一体何なんですか?で、なんで起きた早々その名前が出たんですかぃ?』
『ん〜…。今、昔の夢見ててさ、そんときに言われたんだよ。「おめーに似た花を見た。」って。それがギンリョウソウって名前だったな〜ってさ、思い出したんだ。』
『…旦那に似た花…それってどんな花なんですか?』
『それがわかんねーからキミに聞いたんじゃねーか………。…やっぱり知らねーよなー。なんか不吉な花っぽいしな。』
不吉?不吉な花って何だ?旦那に似た花が不吉?誰だンなコト言ったヤツは。…つーか気になる。一体どんな花なんだ?
そんなコトを考えていて無言になった俺に気付いた旦那は説明をくれた。
『昔な、当時のツレが通りすがりに見た花が俺に似てるって言いやがってさ。でもどんな花だったか聞いても教えやがらねーんで、別のヤツに聞いたんだよ。ギンリョウソウってどんな花なんだ?ってさ。』
一息ついて、旦那は先を続ける。
『そいつが言うには、その花は葉緑素を持たなくて、枯れ葉や生き物の死骸とかから養分をとって成長するんだそうだ。で、そーゆーのの上に俯くように咲いてるんだってさ。な、不吉なカンジだろ?』
そう言って、微妙な顔で、微妙に笑った。
なんとも言えない、いたたまれないような気分になって、俺も微妙に笑う。
なんでそんな花が旦那に似てるなんて言いやがるんだ。
なんとも言えない気分のまま、その場を辞した。
そしてその足でネットカフェへ向かう。
ああ、調べてやろーじゃねーか、旦那にあんな顔させやがる植物を。
そう意気込んで見つけたその花の画像は…
…ああ…、それは確かに旦那に似てると言える姿をしていた。
葉緑素の無いという、一切の色を持たない、白い、透き通るように白い色。
まるで蝋細工のような、硝子細工のような質感。
何かを想うように、俯くように佇む姿。
旦那は何て言っていた?
旦那に似ていると言った本人は、通りすがりに見た、と言っていなかったか?
そうなると、その人物はきっと今の俺と同じコトを思ったんじゃねぇか?
花の説明をしたヤツは、ただその花の生態を述べただけじゃねぇか?
その花の画像をプリントアウトして、俺は万事屋へ再び向かった。
旦那は不吉だと思ったその花と自分が似ているということに納得してしまっていた。
屍の上に俯き佇む姿に納得するなんて、それが事実でも哀しいですぜ、旦那。
ましてや、俺が似ている思ったあの花と旦那の姿を、最初に似てると言った人物が思っていたなら、その齟齬は哀しすぎる。
そんな俺と、俺と同じコトを思ったであろう自分の想いを伝えたくて、万事屋へ向かって走る。
この画像を見たら、旦那はどんな顔をするだろうか?
そうして俺は万事屋へ飛び込んだ。
end。