キリリク
□勝つのはどっち?
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−−シュッ ドスッ
宙を切り裂くナイフが目の前の獲物を仕留める
「ししっ。弱っちーの」
余裕の笑みで隣に立つベルに頬を膨らませたフランが食ってかかる
「もーう。今のはミーのターゲットでしょー」
「いいじゃん別に。オレが全〜部殺ってやるよ♪」
一緒に任務に出るといつもこうやって自分を庇い、守ろうとする。それが自分に向けられた愛情ゆえの事だとは解っているのだけれど
「むー。すぐそうやってガキ扱いするんだもんなー」
確かに幻術士であるフランはベルの様に実戦タイプではないし、幻術を使い続ければ精神的にキツイのも正直なところだ
「カエルはその辺で冬眠でもしとけば?」
「ミーだってまだやれるのに…そうだ!今日の任務、ミーの方が多く倒したらミーの言う事なんでも聞いてくれますかー?」
「んー、どうすっかなぁ。ま、当然オレが勝つんだし、どーせカエルの要求なんて"どこどこのプリン10個ー!"とかそんなモンだろ」
「100個の間違いですよ、堕王子ー」
残りの敵は3人。今のところベルが3人、フランが2人倒しているので3人とも倒せばフランの勝ちになる
暗殺される側からしたら10個だろうが100個だろうが、そんな賭のネタにされるのは気の毒な気もするけれど
「よーし」
さぁ行くぞと気合いを入れた瞬間
ちゅっ 不意打ちのkiss
「なっ… ///」
「ししっ。力入れすぎだっての」
(もう本当に、この人は… ///)
「うー」
結果はフランが2人、ベルが1人で4対4のドロー
しかも最後の1人は明らかにフランにとどめを譲った状態だった
「ざんねーん、引き分けだったな」
本当ならベルが勝っていたはずなのに、あえて引き分けにしたのも愛ゆえなのだろう。しかし負けだけはしないのが王子の本能らしい
「ちぇーっ」
ふてくされて背中を向けると後ろから抱き締められた
「ししっ。んじゃプリン100個買って帰ろーぜ♪」
「え?ミー勝ってませんよ?」
「負けてもいないだろ?」
あぁ、こういうのが自分だけが知っているベルの"優しさ"なのだ
「でもミーのお願い、プリンじゃないですよー」
「あ?んじゃナニ?」
そう言われても何か考えていた訳ではないので返事に困る
「えーっと…」
くるっと身体の向きを返され、ベルがニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる
早く言えと急かされた訳ではないが口をついて出た答えは
「ぷ…ぷりんを"一緒に"食べること! ///」
ぷっ と小さく吹き出したベルは
「Si。もちろん喜んで」
そう言ってもう一度優しく抱き締めた
(あーもう、ミーの完敗です…)
「オレ1個でいいぜ」
「じゃあミーが99個ですねー」
「マジ!?」
→あとがき