love story 【未来編】
□想いは同じ
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「帰り、遅くなるかも」
昨日そう言って任務に出たベルともう丸一日会っていない
暗殺部隊に身を置いているのだから、今までだって何度もそういう日はあった
だが、お互いの気持ちを確かめ合った今は離れている一日がたまらなく長く感じる
一人で部屋にいても余計に気分が沈んでしまいそうなので、通い慣れたベルの部屋の窓からぼんやりと外を見ていた
ベルへの想いに気付く前は、任務に出ていても"生"や"死"について考えることなどなかった
怖いと感じることさえも
命令であれば容赦なくターゲットの"生"を奪い、自らも常に"死"と隣り合わせにある
それがファミリーの中でのヴァリアーの役割なのだ
でも今は、もしかしたら愛する人を失うかもしれないという恐怖で心が縛られる
あの人に限ってそんな事はあり得ないと解っていても、任務から戻った姿を目にするたび、いいようのない安堵感に包まれる
「ただいま」と抱き締められるたび、生きている喜びをかみしめる
窓から離れ、無造作に脱ぎ捨てられていたボーダーのシャツを拾い上げてソファに腰を下ろす
「…早く…帰ってきて」
シャツに顔を埋め、微かに残るベルの香りを吸い込んだ
(ミー、一体どうしちゃったんだろ…)
人と関わることを避け、自らの感情も胸の奥にしまい込んで生きてきたのに、こんなにも心を乱されるなんて…
自分で自分がコントロール出来なくなりそうな不安定な状態。術士にとっては致命傷にもなりかねない
師匠に知られたら何を言われるか…クフフと不敵に笑うパイナッポーのシルエットが頭に浮かんだ瞬間
−−−−タタッ
静まり返った邸内に響く微かな足音を聞き逃さなかった
「センパイ?」
ボーダーシャツを握りしめたまま立ち上がり振り返るのと同時にドアが開かれ、闇の中に浮かぶ金色の髪と輝くティアラが瞳に飛び込んできた
「ここにいたのか。真っ直ぐカエルの部屋行ったのにいねーんだモン、任務入ったかと思って焦ったゼ」
あぁ、そうか
ベルもきっと同じ気持ちでいたのだ
真っ先に会いたい人は、この世界でただ一人