love story  【未来編】

□赤はアナタの色
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「カエル見〜っけ♪」

部屋へ向かう廊下で声を掛けられた

肩幅程の段ボールを2つも抱えている為、ほとんど前は見えていなかったが、自分を"カエル"と呼ぶのは唯一人だ

「この状況見て持ってやろーとか思わねーのかよ、ヒトデナシ」

と言ったと同時にひょいっと目の前の段ボールが取り除かれ視界が開けた

「荷物多いなら携帯に掛けりゃいーじゃん」

片手で軽々と段ボールを担いで並んで歩く

段ボールを1つ引き受けてくれただけでも奇跡なのに、この"呼べば迎えに行ってやったのに"的な発言

…本当に堕王子か?

チラッと上目使いにその表情を盗み見ると、どうやらすこぶる機嫌が良いらしい

(そりゃあ確かにヘルプを頼みたかったけど…携帯は現在ミーの部屋にあってですねー、つまり忘れて出掛けた訳で…どうにもこうにも自力でなんとかするしかなかったんですよー。ちぇっ)

「センパイも一応人並みの行動が出来る時もあるんですねー」

「あン?こーゆー時は素直に"ありがとうございます"だろ、コーハイ」

「人として当然の行為にお礼なんかしませんよー」

あぁ、本当に素直じゃない自分が恨めしい




「アレ?カエル珍しいじゃん?」

そう言って空いた方の手がフランの胸元に近づく

普段アクセサリー的なものを身に付けないフランの鎖骨に光る細いチェーンに目が止まったからだ

「あっ…(まずい)」

さっき買い物の途中で珍しく衝動買いしてしまったネックレスが襟ぐりの深いシャツからのぞいていた

小さな小さな赤い石がついたソレは一目でベルを連想させるものだった

(赤なんてミーには似合わないけど…)

でも次の瞬間には店のドアを開けていた




「あー、こっちも持ってくれるんですかー」

近づいてきたベルの手に自分の段ボールを載せてベルの動きを封じる

「ナニすんだよっ(怒)」

素早くシャツの襟元を直し、サロペットのポケットに両手を突っ込んでベルとの距離をとる

両手を段ボールで塞がれたベルはナイフを投げることも出来ず、怒りマークを浮かべるのが精一杯だった

「どーせミーの買ってきたお菓子とケーキ目当てでしょー」

「うっ…」

どうやら図星らしい。機嫌が良かったのもそのせいか

「ちゃんとあげますよ。ソレを部屋まで運んでくれたらですけどー」

身軽になったフランはベルの方を向いたまま後ろ向きで廊下を進んで行く

「覚えてろよ!テメーの分まで全部喰ってやる!!」

「前言撤回ー。荷物置いたらとっとと帰って下さーい」

そう言いながらも、ベルを招き入れた自室のドアを静かに閉めた



(2011.1/18)

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