pleasure story【享楽編】
□Sunny Day
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「べ…じゃなかった、センパイ。いつまで寝てるつもりー?」
今日は朝からの快晴に誘われてシーツやピローカバーなどの洗濯を済ませ、部屋に戻ってみればベルがカウチソファにだらしなく転がっていた。真紅のビロードにぴったりと頬をつけ、うつ伏せの状態で右腕はだらりと床に向けて垂れ下がっている
そう言えばフランも幼い頃、任務で帰りの遅くなったベルを待ってソファで眠ってしまうことが何度もあった。そんなフランをそっと抱き上げベッドに運んでもらった朧気な記憶。柔らかなベッドと温かな腕に包まれて目覚めた翌朝の心地よさは何ものにも代え難い幸せな思い出で、今でもフランの胸を甘く満たしてくれる
(あれ?ティアラは…)
もう一度声を掛けようと覗き込んだ顔の先、ふわふわの金糸の上に在るべきものがなく昨夜どこで外したかと思いを巡らせてすぐにカッと頬を染めた。昔から帰還するとまずシャワーを浴びる習慣のあるベルに半ば無理矢理バスルームに連れ込まれたのだ。汗と返り血を洗い流すだけと言いながらもベルの指はそれだけとは思えない不埒な動きでフランの肌を這い、結局そのままコトに及んだ
お互い任務明けだったのに、それだけでは足らないとばかりにベッドに移動してからも何度も啼かされてしまった。意識を飛ばすように眠りに落ちたのはもう明け方近かったのかもしれない。実はフランが目覚めた時点ですでに日はかなり高かった。爽やかな陽射しとは対照的な乱れた寝具があまりにも生々しくて、まだ起きる気配のなかったベルをリビングに追い立てて自分はランドリーへと駆け込んだのだった。きっとフランが地下のランドリーへ降りたあと、そのままここで眠ってしまったのだろう
(んー…バスルームかな。それともベッドサイド?)
ベルを起こそうとしていたのも忘れバスルームに足を向ける。鏡の前には見当たらず、棚から畳んであったリネン類を取り出すとそのままリビングを通り抜けてベッドルームに向かった
(あ、あった!)
鈍く光るティアラはやはりナイトテーブルの上にあってホッとしたのも束の間、同じ所にローションボトルも放り出したままなのがどうにも気になりいつもベルがそれらを取り出す一番上の抽斗に投げ込んだ。ベルとのセックスにもだいぶ慣れたと思うし、恥ずかしい姿も散々見られているのに未だそういう事を連想させるものを目の当たりにするとどうにも落ち着かない
早く一人前になってベルと肩を並べたいと、ただそれだけを願っていた頃。身体を鍛える訓練も幻術の練習も、その願いがあったからこそ続けられた。身体はそれなりに成長し、念願だった一緒の任務にも出られる様になったけれどそっち方面に関してはベルに翻弄されるばかりで進歩のなさは充分自覚している。だが恥ずかしいものはどうしたって恥ずかしい。与えられる快感に流されてしまう身体と羞恥心のバランスは性の悦びを知ったばかりの16歳のフランには難しい
(大好きなんだけどな…)
ティアラの縁を指でなぞり、一度ぎゅっと胸に抱いてナイトテーブルに戻す。気持ちを切り替えようと持ってきたシーツの端をひっ掴み、ばさりと空中へ放るように広げた瞬間背中にドンという衝撃を受けてキングサイズのベッドへ倒れ込んだ
「わっ!」
「しししっ。油断大敵〜♪」
そのままベッドの上をゴロゴロと2回ほど転がり、まるで巻き寿司のように広げていたシーツの中に巻き取られてしまった
「ぷはっ…!もーぅ、シワシワになっちゃうでしょー」
かろうじて端から頭を出し、一連の犯人の顔をジロリと睨む。しかしベルはそんなフランの目尻にちゅっ、ちゅとkissを落とし、腰に回した手で更にぎゅうっと抱き締めてくる
「ぐぇ…っ。苦しいってばー」
「だぁって、こうでもしねーとまた逃げられちゃうじゃん」
「逃げる?ミーが?」
言葉の真意が掴めずきょとりとすればまたちゅっ、と啄まれた
「せっかくのオフだってのにいきなりベッドから叩き出されるし、じゃあソファでもうひと眠りしようと思ったらおまえはシーツ抱えてどっか行っちまうし」
「あー…、天気も良さそうだから洗濯しちゃおうと思って。別に逃げたんじゃなく、ひと仕事してきたんですよー」
「あぁ。昨夜のアレやコレやで結構ヤバかったからな。しししっ」
「う…っ」
ついさっきそのテの話は苦手だと思考から追い出したばかりなのに、恐らくベルはそんなフランの反応を楽しんでわざと言っているのだろう
「なぁ、今日は休みなんだしもうひと眠りしようぜ」
「でももう昼に近い時間で…そろそろお腹も空くんじゃない?」
「それならここに美味そうな林檎がある」
かぷっ、と頬に歯を立てられ正に林檎のように耳まで真っ赤に染まった。なんとか身体を離そうと身を捩ってみるがシーツにくるまれた上にベルにしっかりとホールドされていてどうにもならない。それなのにベルの方は腰に回した手を巧みに動かしフランの尻を揉み始めた
「ひと眠りがダメならひとセックスでもいーけど?」
「そんな言葉聞いたことないよ!それに、ゆ…昨夜いっぱいしたでしょっ」
「えーっ。王子、あンなんじゃ全然足りねーし。ひとセックスどころかふたセックスでもみセックスでもオッケー♪」
「ちょっ、待って。ダメだってば……っ」
絡み合った脚を動かした拍子にベルの太腿がフランの股間に当たり、そのままぐにぐにと刺激されて変な声が出そうになったのを慌てて呑み込んだ
「分かったっ!分かったから大人しく寝よ?ほらじっとして、べるっ!」
「もう眠気飛んだし。こんな可愛い反応されてじっとなんかしてられるかっつーの♪」
すっかりソノ気のベルに抗う術は、なけなしの意地と理性だけれどそれもいつまで保つかはっきり言って自信がない。だってベルの腕の中はあの頃と同じように優しくて温かくて、淡い恋心まで思い出してしまうから ―――
2016/7/24
→side B 『Lewd Night』へ続く
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