dream story 【夢中編】
□Boy meets… B
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「センパーイ、なんか嫌〜な予感しかしないでっかい木箱がボンゴレ経由で届きましたけど返品していいですかー」
「あ?おぅ、こっちこっち」
牛の角が烙印された木箱を、明らかに渋々運んできたフランがテーブルの脇に下ろす。嫌みっぽく腰をトントンと叩きながら疑り深い目を向けてくるので読んでいた雑誌を放り出しソファに座るように促した
「この箱の中身に思い当たるモノがあるんですけど、まさかソレですかー?」
「そ。ソレ♪」
途端にハァ、とため息を零し両膝に手をついてこちらへ身体を向ける
「ほどほどにしてってお願いしたはずですー。それなのにいつこんなモノ頼んだんですか」
フランの予想通り、この箱の中身は10年バズーカに関するものだ。フランにはまだ話していなかったが入れ替わり時間が5分というのはどうにも短すぎる。出来れば半日とか、せめて2〜3時間はないとゆっくり話も出来ないとクレームをつけておいたのだ。当然、それなりの金額を提示して
「まぁまぁ。とにかく開けてみよーぜ?」
この時代に恐ろしくレトロな木箱を工具でこじ開けてフランと共にフタを外す。中身が中身だけにたっぷりの緩衝材に埋め込むようにバズーカ弾と何故かパスタとトマト缶が詰め合わされていた
「あン?なんだこりゃ」
パスタの袋を摘み上げポイッと放るとフランが慌ててキャッチする
「食べ物を粗末にしちゃダメですー。あとでオカマに渡せば夜食に出してくれると思いますよー」
「あっそ。好きにしな。オレはコッチにしか用ねーから」
ポイポイッと残りのパスタとトマト缶を放り投げ整然と並んだ弾をつっと撫でる
「ん?」
その中にひとつだけ他と色味の違う弾がご丁寧にラッピングを施された状態で収まっている
「なんですか、それ?」
両手いっぱいにパスタとトマト缶を抱えたフランが横から覗き込む
「んー…、手紙がついてんな。…あぁ、そーゆーコトね。しししっ」
「なんか背筋がゾクゾクするんで、ミーもう帰っていいですかー」
立ち上がりかけたフランのフードを引っ張りソファに引き戻すとゲロッと鳴いた
「試してい?」
「嫌ですー」
「即答かよっ」
「即答に決まってんだろ、堕王子ー。そんな胡散臭いもの勘弁ですー。それに…」
抱えていたものをテーブルに並べ直し、じろりとこちらを見据える
「ミー、ちょっと調べたんですけど10年バズーカって現在の自分と未来の自分を5分間入れ替えるものらしいじゃないですかー。なら、ここには未来のミーが飛んでくる訳で、過去の…幼いミーが来るのっておかしくないですか?」
「あぁ、そのこと?おまえの情報もう古いぜ?今はホラ、ここのスイッチの切り替えで過去でも未来でも選べんだよ」
「えっ!?そんな都合のいいこと…ってなんでセンパイがそんなこと知ってんですか」
「だってオレ、王子だもん。でもって天才だから♪」
「…答えになってませんよー」
「時代は進んでんだっつーの。改良だってされんだろ。で、今回は更に改良させたワケ」
そう言ってラッピングされた弾を目の前にチラつかせリボンを解いて装填する
「ちょっ、待って!何を改良したのかまだ聞いてませんっ」
「いーからいーから。撃ちゃわかるって♪」
顔の前で腕をクロスさせたフランに照準を合わせトリガーを引いた
ドカーーンッ!
「けほっ、けほっ……あ!ベルッ!」
子供特有の少し高めの声が白く立ちこめた煙の中から聞こえる
「おー、フラン♪」
「はーい」
「は…い?……え?えっ!?これ、どういうことですかっ!?」
膝に飛び乗り首に腕を巻き付けたちびフランをぶら下げたまま、まばたきも忘れたフランに向けて親指を立ててやった
「しししっ。大成功♪」