dream story  【夢中編】

□Boy meets… A
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「ばりあー?」

「Non!ヴァだよ、VA!おまえ発音悪りィなぁ。ホラ、ここンとこ意識して」

オレの膝の上できょとりと首を傾げるちびフランの唇をちょんちょんとつつく

「んと…う゛ぁりあー?」

「そ。C'est bien!よく出来ました♪」

ご褒美のkissを頬に落とすとちびフランは擽ったそうに肩を竦める

「そこにベルがいるの?」

「あぁ。おっかねーボスと無駄に声のでけぇ隊長と筋肉オカマと何の役に立つか分かんねーキモヒゲ男もな」

「…なんかカオスな集団だね」

けらけらと笑うちびフランをぎゅっと抱き締めるとふんわりと温かい。体温が低めのフランも子供の頃はそれなりだったらしい

「あ、10年前か…」

ふと脳裏をよぎった黒い小さな影の名前が口をついて出る

「マーモン…」

「え?なーに?」

前髪で隠した瞳を覗き込むように見上げてくる大きく澄んだ翡翠の粒

「もうひとりいた。あの頃はマーモンって術士がいたんだ」

「いた?今はその人いないの?」

そう、今はいない。そのマーモンの後任としてスクアーロとオレが攫ってきた若いがえらく腕の立つ術士、それがフランだ

「ベル?どしたの?」

急に黙り込んだのが気になったのか小さな手のひらでオレの頬をそっと撫でてくれる

「ん、悪りィ。なんでもねーよ。それよかヴァリアーは7ヶ国語以上話せるのが入隊条件だぜ?さっきの発音じゃ危なっかしいな」

「むー。そんなことないもん!フランス語とー、イタリア語もちょっとわかるし…あとは何語を覚えたらいい?」

「日本語も…だな。おまえジャッポーネ知ってるか?」

「うん。本で読んだことあるよ。テンプラ、ゲイシャ、フジノヤマ」

「しししっ。それ、いつの時代の本なんだよ。それにジャッポーネで美味いのはテンプラじゃなくて寿司、な」

「す…し?」

「ん。今度一緒に食おーな♪」

「うん!」

食べ物の話をする時が一番嬉しそうな顔をするのは今のフランと同じだ。ちっちゃくてもコイツはフランなんだなと実感する

ぐりぐりっと頭を撫でてやるとえへへととびきりの笑顔を見せてくれた

「ホント、おまえ可愛いな♪」

すりすりと頬を寄せると、もくもくとタイムアップの合図の白煙が上がる

「あー、もぅ。5分とか短かすぎンだろっ」

「ベル!また来てもいい?」

「あぁ、またな。…っと、さっきの名前忘れんなよ」

「うん!ばりあーだよね?」

「ホラ、発音!ここンとこって教えたろ」

ちょんちょんと唇をつついた瞬間、目の前のフランの大きさが変わった

「…っとー、おかえりィ♪」

「おかえりじゃないですー。どうして毎回こーゆー状況なんですか。まさかちっちゃいミーに口チューとかさせようとしてたんじゃ……」

蔑んだ目で見られても、唇をつついている状況では誤解されても仕方ない。でもいちいち言い訳するのも面倒で「さぁ?」とトボけるとじろりと睨まれた

「ボスもセンパイに甘すぎですー。10年バズーカなんてヴァリアーに必要ないでしょー」

前回、ボンゴレ本部で初めてちびフランを呼び出した後、ボスに頼んでヴァリアーにも10年バズーカを常備させた

「いーじゃん。どーせオレのポケットマネーだし?」

「金の出所の問題じゃないんです」

膝の上からにじり降りたフランはオレと向かい合った位置でペタンと座り込んだ

「大体どうしてそんなにちっちゃいミーに拘るんですか」

「ん?だぁってアイツもオレに逢いたいって言うんだぜ?」

「そんな訳ないですー。どうせセンパイがお菓子かなにかで手なづけたんでしょう?」

ビシッとオレを指差してクレームをつける。オレはその指を握ってぶんぶんと上下に振ってやった

「そんな訳あるっつーの。それともナニ?もしかしておまえオレがちびフランばっか可愛がってるからってヤキモチ妬いてンじゃねーの?しししっ」

「馬鹿じゃないですかー。なんでミーが自分で自分にヤキモチ妬かなきゃなんないんですか。ミーはただセンパイがちっちゃいミーに何かイカガワシイことしやしないか心配してるだけですー」

自分では気付いていないのか、いつもより饒舌なのが平常心を保てていない証拠だ

「なにソレ?んじゃ今のフランにならイカガワシイことしてもいーんだ♪」

ここがベッドの上なのをいいことに目の前のフランを押し倒した

「そーゆーことじゃないですー。どけっ、エロ堕王子っ!」

ジタバタと暴れる手足を自分のそれで押さえ込み、憎まれ口ばかりたたく唇を塞いだ

「…んっ」

歯列をなぞり存分に口内を貪ってから解放してやる頃にはフランの抵抗もすっかり治まっていた。この艶っぽく潤む瞳にいつも煽られる

「オレはね、フランを愛してんの。すっげー大事なワケ」

「……」

無言のフランを見下ろしながら言葉を続ける

「今のおまえが大事だから、ちっせぇフランも大事にしたいんだよ。だってどっちもフランだろ?」

「センパイ……」

「それと、あんなガキに口チューせがむほど飢えてねーっつの」

但し、頬チューはこの際伏せておくことにした。それがバレたらまた何を言われるか分からないし、暫く禁欲生活を強いられる可能性もある。ここは美談で終わらせておくのが得策だろう

「…分かりましたー。でも、10年前のミーを呼び出すのはほどほどにして下さいね」

フランの上から退き、腕を引いて起こしてやると仕方なさそうな顔を見せてはいるがその奥に隠した照れを見つけて気分が上がる

「了〜解♪なぁ、それより寿司食いに行かね?」

「いいですねー、久しぶりにお腹いっぱい食べたいですー。勿論センパイの奢りですよね」

「おぅ。好きなだけ食っていーぜ♪んで腹一杯になったらこいつを一発…。ちびにも今度寿司食わせてやるって約束したンだよ」

足元に転がっている10年バスーカを拾い上げフランに向けて構えれば照準の先には不機嫌な恋人の顔

「センパイ、人の話聞いてます?ほどほどにって頼んだばっかりじゃないですかっ!」

むくれ顔のフランには入れ替わり時間5分をもっと長く出来るように改良するつもりなのは今はまだ言わない方がよさそうだ



(2012.10/27)

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