sweet story 【日常編】
□ジェラートは何の味?
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5月のイタリアは一年の内で最も過ごしやすい気候で、殺人的な暑さとなる前のこの季節に観光客も増え街が賑やかになる
このところ大きな任務もなく、閉じこもってばかりにも飽きたので思い切って二人でデートと洒落込んだのだが
「やっぱ人多いじゃん」
元々人混みが苦手…と言うか嫌いなベルはざわめく街を恨めしげに見渡していた
「観光客がドッと増えますからねー、この時期」
特に行くあてがあてもなく街をブラブラ。古本屋を覗いたり、ブランドショップに入ったり
「今日は本買わねーの?」
「だって手荷物増えると…(いつもセンパイが持ってくれるから悪いし)そーゆーセンパイも珍しく何も買わなかったですねー、さっきの店で」
「んー、オレも手荷物増えんのがちょっと…(両手塞がったらフランと手ェ繋げねぇじゃん)」
それぞれの想いを胸に秘めつつ、フルーツが山と並んだメルカート(市場)をひやかしながら歩いていると陽気なマンマが声を掛けてくる
『人生楽しんでるかい?』
「人生ねぇ…」
ベルが小さく復唱するので
「楽しんでないんですかー?」
首を傾げて聞き返す
「まぁ、それなりに」
並んで歩くフランの肩に手を回し、でも視線は空に向けられていた
(人生楽しめる立場じゃない…ですよね、ミー達は…)
暗殺部隊に身を置いている限り明日の我が身がどうなるかなんて誰にも判らない
そんな風に考えない様にしようと思っても悲観的思考の強い自分は"もしかしたら…"と自分の身よりもベルを失うかもしれないという恐怖に胸を抉られる
(まぁ、センパイに限ってそんな事あるはずないって信じてるけど…)
「あ!センパイ、ちょっと待ってて下さい」
パタパタと走ってどこかへ消えたフランが両手に赤と白のジェラートを握って戻ってきた