sweet story 【日常編】
□ミンクにやきもち
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その日の喧嘩も、いつもの些細な罵り合いからだった
「ワガママ堕王子ー」
「なんだとクソガエル!」
でもすぐにいつも通り喧嘩の事なんて忘れてちょっかいを出しに来ると思っていた−−−が
自室で1冊目の本を読み終わり、2冊目を数ページ進んだあたりでなんだか落ち着かない気分になった
(来ないのかなー、ベルセンパイ…)
いつもならあれやこれやと口や手を出してきて、折角の休日も読書どころではないのに。こんなにすんなりと1冊目を読破出来ると逆に不安になる
読みかけの本を閉じ、さて、今朝の喧嘩の原因は何だったかと考える
(うーん…思い出せない)
結局はそうなのだ。本当にほんの些細な事から始まるいつもの口喧嘩
お互い素直じゃないから引き際が判らない。特に原因がないから謝る事も出来ない
二人だけのひねくれたコミュニケーション
(ふぅ…)
タメ息をひとつついてベルの部屋へ向かった
−−コンコン
「誰ー?」
「ミーです」
「…開いてるけど」
カチャ
こちらに背を向けてソファに腰掛けているベルの肩越しからミンクが顔を覗かせた
「キィ♪」
「何?」
素っ気ない言葉。振り向きもしない
心臓をぎゅっと掴まれた様な痛みが走る
二人の不穏な空気を感じてか、ミンクがベルの肩から飛び降りてフランの足元にすり寄ってくる
前足から脇に手を差し入れて抱き上げると、フランの顔をペロペロと舐めた
「…隣、いいですかー」