sweet story 【日常編】
□ずっとずっとそばにいて
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まだまだ終わりそうにない宴を抜けて部屋へ向かう二人
「えーっと…どっちの部屋行きますー?」
「カエルの部屋」
(あれ?当然センパイの部屋かと思ったのに)
「早くフランをぎゅうってしたい」
やはり少し酔っているのか、ベルらしくない言葉が転がり出た
「ミーの部屋だと…シングルベッドですよー?」
誘っているみたいで、言ってから恥ずかしくなった
いつもならそんな発言の揚げ足をとってくるベルから返された言葉は
「オレのベッドじゃ…広すぎて眠れない」
フランの部屋に入るなり、ベルはフランをぎゅうっと抱き締めた
まるで一人で留守番させられた子供が、やっと帰ってきた母親にしがみつくそれに似ていた
「センパイ…」
こんなにも自分を待っていてくれたんだと思うと、不覚にも涙が出そうになる
自分の知っているベルはいつも無駄に自信満々で強くて明るくて逞しくて…
そのベルをこんな風にしてしまったのは自分…?
マーモンの言葉が頭をよぎる
「…ちょっ、センパイ重いですー」
寄り掛かるように全体重をかけてくるベルと抱き合ったまま後退りしてベッドに腰掛ける
それでもベルはフランを離そうとはせず、自分の足でフランの足を囲い込んでベッドへ倒れ込んだ
「センパーイ、もしかして酔ってますー?」
「…フランに酔ってる」
「うはー、恥ずかしくないんですかー///」
「ないね」
やっと身体を離し、上体を起こしたベルは仰向けになっているフランの顔の両側に手をつき、ごくごく至近距離で喰い入る様にフランを見つめた
「あぁ…オレのフラン」
その囁きが鼻先をくすぐり、そのまま唇が降りてきた
「んっ…ふっ……」
頭ごと抱え込まれ、ぴったりと重なった唇からでも熱い息が洩れる
滑り込んできた舌を追うように自らの舌を絡ませると、何故か瞳が潤んだ
それは生理的な涙なのか、感情からくるものなのか、思考することさえ出来ない位に深く繋がった瞬間だった
再び出逢えたこの歓びを、ただただ感じていたくて
唇を離すと、またどこかへ消えてしまうのではないかという不安を打ち消したくて
伸ばした腕をベルの首に回し、更に引き寄せる
そうして、いつまでもいつまでもお互いの存在を確かめるように口づけた
「ずっとずっとオレのそばにいて」
永い永いキスのあと、ベルはそう言うと ふうっ と短い息を洩し、コテンとフランの横に転がった
「えっ?」
安心しきった顔でスースーと寝息を立てている
「……子供かっ」
その突っ込みに返事はなく…
自分の腕を枕にして眠るベルが、どうしようもなく愛おしくて柔らかな蜂蜜色の髪に口づけた
「もうどこにも行きませんよー」
ずっとずっとそばにいます
ぴったりと身体を寄せないと落っこちてしまいそうなシングルベッドで
トクントクン
心地よいベルの鼓動を感じながら幸せな眠りについた