sweet story 【日常編】
□新しい物語のはじまり
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「おかえりなさぁ〜い、フランちゃん♪」
「相変わらずのオカマっぷりですねー。見事としか言いようがありませんー」
「んまっ、この子ったら♪ま、いいわ。戻って来たお祝いに許しちゃう♪」
「それと…まだ生きてたんですねー、変態雷オヤジ」
「ムッ。貴様もそのへらず口、変わっていない様だな」
あぁ、みんなここにいる。何も変わってない
「おーい、マーモン!」
ベルが声を掛けた、小さな赤ん坊の姿をした前任者マーモン以外は…
「やぁ。キミがボクの後に来たっていう術士かい?」
ベルが握ったまま離さない自分の手元をチラッと見られた気がした
「フランですー」
「話はベルから聞いてるよ。キミがあの六道骸の弟子ってのが、ちょっと気に入らないけどね」
「あー、ミーも師匠から聞いてますー。リング争奪戦の勝負で師匠が余裕で勝っ−−ムグッ!」
ベルが慌ててフランの口を押さえて言葉を遮った
「なんだい?ベル」
「いやいやいや…ちょっとこっち来い、フラン」
ずるずると引きづられてサロンを後にする
「なにするんですかー」
「おまえなー…ちっとは考えて喋れよ」
「ミーは事実を述べたまでですー」
「だーかーらー。マーモンはカエルの毒舌にまだ慣れてねーだろ」
ムッ (マーモンさんを庇うんですね。なんかちょっとムカつきますー)
「一応、初対面なんだし」
「ミーに気を遣えって言うんですかー?ミーはいつも通りですー」
「フラン!」
「……もーいいです」
ベルの腕を振り払って自室へ戻った
新しい世界で、またベルと一緒の『今』を手に入れたけれど
この『今』は二人が出会ったあの『過去』とは違う世界
あの時にはなくて、今あるもの
いや、あの時にもあったのだ。だから自分はヴァリアーに属しベルと出会えた
自分の前任、マーモンの事はベルから色々聞いていた。マーモンの話をする時のベルは嬉々として、そしていつも少し寂しそうだった
自分の知らないベルをたくさん知っているマーモンを目の当たりにして、何故かそれを受け入れられない自分
他のメンバーはマーモンが戻って、きっと以前と同じ様に接しているのだろう。それは自分が戻った事に対してもそうなのだが、どうしてだか自分だけがあの場で浮いていた様な、そこに自分がいてはいけない様な、不安な気持ちがグルグルと渦巻いていたたまれなかった
そしてまた素直になれず、毒を吐いてしまう自分が嫌で逃げ出したのだ