dream story  【夢中編】

□ささめき
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「いちいち殺さなくてもいいと思うんですけどー」

「情報をリークしたのがバレたらどっちみち殺られンだろ。そんなら気持ちイイまま昇天させてやった方がよくね?王子、やっさしー♪」

緩めたタイを襟から外し、ポケットに押し込めて任務の済んだ部屋をあとにする

「それなら最初っから幻覚使ったっていいじゃないですかー。別にセンパイが直接そういう事しなくたって…」

「オトコとオンナのビミョーな駆け引きっての?そーゆーのは直接肌合わせねーとサ」

「なんか聞こえはいいけど、単にセンパイがヤラしい事したいだけのような気がしなくもないですー」

ふて腐れているのか、いつも以上にぶっきらぼうな物言いだが目元に赤みが差しているのを見逃さなかった

「バーカ。任務じゃなけりゃ、あんなオンナ相手にするかよ。それにオマエの幻覚でそこまで出来んのか?経験豊富そうには見えねーんだけど」

品定めするようにフランを上から下まで視線で舐る

「かっ、勝手に決めつけないで下さいっ」

「なんならオレが指導してやってもいいぜ?しししっ」

「な…なに言ってんですか、エロ堕王子!次からはマーモン先輩と組んで下さいー」

そう言ってプイッと横を向いたフランの頬が紅潮しているのを見て腹の底でニヤリとほくそ笑んだ

そもそもベル自身、今までスクアーロの役目だったこのテの任務が好きではなかった。まぁルッスやレヴィにこの役回りが出来るはずもなく仕方なく…という感じだ

そしてフランの言う通り、ペアを組むのはマーモンでもよかった。いや、寧ろマーモンの方が適任だとも言えるがベルはわざと本人には内緒でフランを指名しているのだ

フランが性的経験、つまりオンナを抱いたことがないのは明白で、だからこそ最初は面白がってワザとフランにやらせようと思ったのだ

それが何度か続くうち、ベルはフランの変化に気付いた

最初のうちはとにかく目を逸らして、コトが済んだ後の始末さえ煩わしげに行っていたのに、最近はベルフェゴールがオンナから情報を得る為にその身体に触れている間の空気が変わった

見ていろ、と命令してあるのだから見られているのは百も承知だ。その視線、というより気配で感じるだけなのだが、確かにフランがオンナとの行為に興味を抱いているようなのだ

まぁ実際そういう経験を踏んでもおかしくない年齢のはずだし、普段は何に対しても興味なさげな態度のくせにこのテの任務の時だけ感じる独特の気配

それに気付いてからは特にワザとフランの意識を煽るように仕向けていた

欲に濡れたオンナの相手など、意識はフランに向けたままだとしても容易い。寧ろその方がよっぽど興奮した

フランに見せつけることでフランの性欲を刺激して、フランの身体も目の前で身体をくねらせているオンナのように疼かせてやる。あのツンと澄ました顔が快楽に溺れたら一体どんなだろうかと何度もあらぬ想像をした

陶器のような白さを持つ肌が上気してその頬に赤みが差し、純な翡翠の双眸は艶めいて妖しく潤み、薄く開いた唇から洩れる息はどこまでも甘く甘く鼓膜を擽るのだろう

隊服の下に隠された肢体を何もかも暴いて、その身を快楽の淵へと叩き落としてやりたい

不埒な欲望がベルフェゴールの思考を支配する



「……センパイ?」

ふいに呼ばれて声のする方へ顔を向けると小首を傾げてこちらを見つめていたフランが自分と視線が絡んだ途端明らかに動揺した様子でそっぽを向いた

「なぁ」

ベルフェゴールの呼び掛けにビクッと肩を揺らしたフランにそっと近付き、覗き込むように顔を寄せると乾いた唇を僅かに開きこくんと息を呑む音が聞こえた気がした

子鹿のように震えているフランの腕を掴み、乱暴に抱き寄せた耳元に悪魔の囁きを落とす


「オレがセックスに溺れさせてやろうか」


見開いた瞳はゆらゆらと彷徨い、常なら即座に返される毒舌もその唇から零れることはなかった



(2012.6/19)

→side B 『溺れる』へ続く

◆注意◆
side Bは裏表現を含みます
閲覧は自己責任でお願いします
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