長編小説

□ゲーム×スタート
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すこし昔話をしようか。
俺と遥の出会いは小学2年生の時だった。

遥は俺のクラスの転校生だ。美少女が転校してきたから学校中で話題になり、遥は転校してすぐに人気者になった。

当時の俺はいわゆる“悪ガキ”だった。問題ばかり起こして先生やみんなを困らしていた。だから、俺はクラスの嫌われ者だった。

そんな正反対の俺と遥がどうやって知り合ったのかというと、ほんの些細な出来事だった。


学校で飼っていた鳥が死んだのだ。5匹飼っていたうち4匹が死んだ。死因は複数の刺し傷。
残虐な死因だったので警察ざたになり、犯人が見つかるまで生徒は親と一緒の登下校になった。

しかし、一向に犯人は見つからなかった。
そして、事件は犯人が見つからないまま“気味の悪い”事件として終わった。

最初、俺が疑われた。みんなを困らせようとイタズラで殺した、と。
しかし、当時の俺はまだ7歳だ。7歳の子供がこんな残虐な殺し方はできないとすぐに犯人から外された。

そして結局、犯人は見つからなかった。


事件が起こってから一週間がたった昼休み。
当時の俺は嫌われ者だったから友達なんて一人もいなかった。だから昼休みはだいたい一人で過ごしていた。

キーンコーンカーンコーン、と昼休みが始まるチャイムが鳴る。

教室には誰もいない。否、正しく言うと俺以外誰もいない。運動場に遊びに行っているか、俺のことを避けているかのどっちかだ。

さっきも言った通り当時の俺には友達がいない。親友もいない。話せる人もいない。俺は“ひとりぼっち”だった。
まぁ、問題児だからしょうがない。みんなの嫌われ者だからしょうがない。

でも、

「ヒマだなぁ…」

ひとり、というのはとても寂しかった。

窓側の列の一番後ろが俺の席だった。ここはとても暖かかった。太陽の光りが差し込んでいるからだろう。
しかし、それだけじゃない気がする。なんて言うか…あまり視線を感じなかった。教室の一番端だから誰も見ない。俺を嫌悪する冷たい視線なんてなかった。

しかし、悪い点もあった。

「……たのしそうだな…」

見えてしまうのだ。運動場で楽しく遊んでいるクラスの人達が。

俺の教室はちょうど運動場が見える位置だ。だから、見たくないのに見えてしまう。
そして、いつも思う。

たのしそう、うらやましい、ひとりは嫌だ、と。何度、思っても“ひとり”というのは変わらないのに。


そう言えば、“あの事件”の後はどうなったのだろう、とふと思った。

運動場のすみに設置されている大きな鳥カゴ。一週間前そこで事件があった。学校で飼っていた鳥が殺された残虐な事件。犯人はまだ見つかっていない、“気味の悪い事件”。

しかし、不幸中の幸いもあった。一匹だけ生き残っていたのだ。無惨な鳥カゴの中に真っ赤な血に染まっていた一匹の鳥。

その鳥は今、どこにいるのだろう。何をしているのだろう。学校の鳥カゴの中にいるのだろうか。それとも気味悪がって捨てられたのだろうか。

「ヒマだし、見にいってみるか」


その時、俺の足を動かしたのは純粋な好奇心だった。この行動に意味などなかった。

ただ、気になっただけだ。

だから、夢にも思わなかった。
これが俺の運命を大きく変えることだと。
これが運命の人との出会いだと。


これがゲームの始まりだと―――――――…





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