長編小説

□ゲーム×スタート
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季節は冬。時間帯は朝の8時頃。
外に出れば肌を突き刺すような寒さが襲ってくる。息を吐けば白い。手はかじかんで思うように動かない。

そんな中、俺は外で人を待っていた。場所は自分の家の前。待ち人はいつも一緒に登校している幼なじみ。そして、愛しの恋人。

コートと手袋しか着用していないので、非常に寒い。あいにく、マフラーと耳当てはなかった。

辺りを見回してみたが、俺の待ち人の姿はなかった。
まぁ、いつもの事だからもう慣れた。時間だって余裕。
あと5分ぐらいすれば来るか、と携帯の時計を見ながらそう思ったその時、


「アキちゃーん」

冷えきった住宅路にひとつの声が響いた。聞き慣れた高いソプラノの声。

「お待たせっ」

やっと俺の待ち人が来た。
走ってきたのか、大きく肩で息をしている。

「待った?」

と恋人が待ち合わせに遅れてきたきのセリフを投げかけてくる俺の幼なじみで恋人の梓宮 遥(シノミヤ ハル)。
小学校からの付き合いで現在、一緒の高校に通っている。そして、登下校も一緒。

「そんなに待ってねーよ」

遅刻してくるコイツを待つというのが俺の日課だから、俺はいつものお決まりの言葉を言って、コイツを安心させる。

「よかったぁ〜」

俺の言葉を聞いて安心したように、にっこりと笑った。
もともと遥は綺麗だ。
滑らかなセミロングの黒髪。睫毛がピン、と伸びているブラウン色の大きな瞳。筋の通った鼻。程好く赤く色づいている唇。細身の体と透きとおるような白い肌。
もう一度、言う。
遥は綺麗だ。(可愛いとも言う)。美少女という言葉がよく似合う。

そのせいだろう。
遥の笑顔はとても綺麗だ。
4年ぐらいつき合っている恋人の俺でさえも顔が赤くなるぐらいに。


「……っ、それより何だよその格好」

赤くなっているはずの顔を隠しながら、わざと話をそらす。

「俺はこんだけしか着ていないのに、お前はどんだけ着込んでるんだ」

俺達が通っている学校の制服は群青色のブレザーだ。左の胸元に校章がほどこされており、ネクタイは青と白色。ズボンは、灰色がかった青色。スカートは、淡い紫色と水色のチェック柄。

俺は、制服にコートと手袋しか着用していない。のに、俺の目の前にいる幼なじみはブレザーの下にクリーム色のカーディガン、ブレザーの上にコートを着用。しかも、手袋やマフラー、耳当てといった防寒具も着けている。

すごく暖かそうな格好をしている俺の恋人。………うらやましい。

「へへっ、暖かいよ」
「そりゃそうだ。完全防寒してんだから」

呆れたような口調で言ってやると、遥はまた笑った。
やっぱり遥の笑顔は綺麗だ。

「アキちゃんも、もっと着てくればよかったのに。
マフラーとかどうしたの?」
「マフラー?どっかいっちまった」

「また無くしたの?ほんとにアキちゃんはだらしないんだから」
「うっせぇ」

と、いつも通りの会話をしながら、俺たちは学校に向かった。



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