Knight ― 純白の堕天使 ―

□第二章 親友
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「ふぅ……」

ルカが去り、一人置いていかれたフィアは小さく溜息を吐く。
もうすぐ朝礼が始まる筈だが、と思いながらフィアは周りの喧騒を聞いていた。

元々他人との関わりが上手い方でないフィアは自分から進んで誰かに声をかけに行くことは少ない。
こうして一人、朝礼が始まるのを待つのが、いつもの事だった。
少々寂しいような気がするにはするが、誰かと接触すればするほどに秘密が露見する可能性は高くなるのだから、
一人でいる方が色々な意味で都合が良いのかもしれないな、などと思うことが多かった。

とその時。

「おはよう、フィア!」

鈴を振ったような軽やかで愛らしい声と同時に、飛びついてくる小さな温もり。
白い髪の毛に薄い黄色の瞳の少年だった。
眩しいほど真っ白い白衣が、良く似合っている。

フィアは彼を器用に受け止め、微笑した。
そして優しく彼の頭を撫でながら、言う。

「おはよう、アル」

彼はフィアに名前を呼ばれると明るく笑った。
人懐っこい黄色の目が宝石のようにきらきらと輝いている。

「すごいねぇフィア!
 雪狼のヴァーチェなんて、ノトから凄い昇進じゃない!」

無邪気に笑う少年の名はアル・リフォード。
先天的に色素が薄いらしく、色白で、髪の毛の色も白。
丸い人懐っこい瞳は薄い黄色で子猫のような印象を受ける。
言動、容姿ともに幼く見られがちだが、フィアと同期の入隊者でフィアと同い年だ。
気が弱く、戦闘向きではないものの、治癒魔術の能力が高く、フィア同様に飛び級でヴァーチェになった実力者である。

白衣を着ているあたり、アルは草鹿に配属されたらしい。
フィアはアルの治癒魔術の性能をよく知っているため納得していた。

草鹿(グラス・ディア)というのは守護・治癒を専門とする部隊で、戦い……攻撃には参加しない。
しかし、炎豹(フレイム・パンサー)との仕事の時には、攻撃しかしない……否出来ない彼らの防御をするために戦線に立つこともあるという特殊な部隊だった。




 
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