Knight ― 純白の堕天使 ―

□第四章 精神共鳴
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第四章 精神共鳴




ルカが出ていった後もフィアは暫く動けなかった。
自分自身の手を見つめたまま、その場に凍りついたままでいた。

相手がルカだったため、怪我をさせずに済んだ。
最初に無意識で氷柱を飛ばしてしまった時も、フィアの現状を知っていたルカだったから、上手く防ぐことが出来た。
アレが当たっていたら、どんな人間でも無事ではいられない。

ルカだったから、大丈夫だった。
ルカだったから……
では、もしもノトやアーク程度の魔力しかないものだったら、どうなっていた?

「殺して、いた?」

もしかしたらそうなっていたかもしれないと、震える声でフィアは呟いた。
自分自身に問うように。

魔力を抑えられない。
それでは獣と同じではないか。
本能のままに人を、他の生き物を襲う獣と。

フィアは心の中で自分の村を襲い、両親を殺した竜を思い浮かべた。
本能のままに暴れ回り、村を攻撃した、巨大で凶暴な火竜。
自分で制御出来ない魔力が暴走するということは、それと同じではないか。

「俺も、あれと同じになってしまう……?」

そう呟いたフィアは膝を抱え、蹲った。
涙が零れ、服に落ちる。

魔物と同類。
自分が一番恐れたもの。
憎んだもの。
それと同等……



―― 嫌だ!



心の中でそう叫びながら、フィアは必死に首を振った。

ルカの言う通りだった。
フィアは、自分自身に怯えていた。
自分自身が持つ、計り知れない魔力。
それが暴走したとき、今度は誰かを……仲間を、殺めてしまうかもしれない。
それを考えると、怖かった。

でも、どうしたらいいのか、解らない。
魔力を抑えようと人より多くつけた抑制機だって、ちょっとした弾みに壊れてしまう。
結局、抑える方法なんて、解らない。

途方に暮れたフィアは、一人静かに泣き続けていた。







 
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