Knight ― 純白の堕天使 ―

□第三章 実力
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第三章 実力



フィアとドット、そしてドットの取り巻きは城の円形闘技場(コロセウム)に向かった。

円形闘技場は主に実技訓練や、剣術大会のときに用いる。
普段の訓練で使うことは少ないが、こうして決闘をするときなどには使っても良いことになっている。
他の部屋より丈夫な造りで、多少強めの魔術を使った程度では壊れない施設だ。

こういった決闘には、向いている。
尤も、決闘自体、そうそう行われるものではないのだけれど。

控室でフィアは白い鎧を身につける。
そして、実戦用の愛剣を見て、溜息を吐いた。

「これを使うのはまずいな」

彼はそう呟くと、自身の剣を納め、空間移動の魔術で練習用のフルーレを呼びよせる。
自分の手に収まる細身の剣を見て、フィアは青い瞳を細めた。
決闘くらいならばこれで充分だろう、というように剣先を弾き、フィアは首から十字架のペンダントをかける。

そのペンダントはただのペンダントではない。
魔力を制限するための装備品である。
フィアは他人より強い魔力を持っているため、こういったものをつけずに訓練や決闘をすると、周囲の人間に危害を加えかねないというリスクを負うことになってしまうのだ。
幾ら自分に悪質な絡み方をしてきた相手とはいえ、怪我をさせたい訳ではない。
あくまでもただの決闘なのだということを忘れてはいけない。

この世界には、二種類の魔術道具が存在する。
形は様々で、ネックレスやブレスレッド、アンクレット、ピアスなどの装身具の形をとっていることが多い。
魔力を持つディアロ城騎士団の者たちの多くがそうした魔術道具を身につけている。

一つは、魔力を増強するための強化系の装備品。
ある特定の属性を強化するものもあれば、魔力全体を強化するものもある。
主にそれを身につけるのは、魔力の弱い者だ。

そしてもう一つはフィアが身に着けているような抑制系の装備品。
魔力抑制機(リミッター)は、その人物が持っている魔力をある程度押さえつけ、暴走を防ぐためのものであり、これを身に着けるのは、大体が強すぎる魔力を持つ者。
傍にいるだけで、周りの人間に影響を及ぼしてしまう者もいるからだ。
フィアがまさにこのタイプにあたる。
もしフィアがそのまま決闘に挑んだとしたら、手加減を忘れ、ドットを殺してしまうかもしれない。
そういう恐れからフィアは自分の力を制限しているのだった。

騎士同士の決闘は、魔力、剣、体術のどれかを使って、相手の剣を壊す、相手を組み伏せ、首に剣を突き付ける、どちらかがギブアップする……
そのどれかで勝敗が決まる。
昔は命を懸けて行うものだったらしいが、本当に死んでしまう騎士も多かったため、
勢いを殺さず急所を狙うなどの命を狙うような行為が禁止されて、今や一種のスポーツのようになったらしかった。

基本的に無暗な決闘は禁じられているのだが、今回の一件に関してはきっと許してもらえるだろう。
フィアはそう思いながら、ふっと息を吐き出したのだった。



 
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