騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□魔法の言葉(子豚様とコラボ)
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魔法の言葉(子豚様のお子様とのコラボ)







「……遅い」

ギルドは小さくつぶやいた。

先ほどから何度も繰り返している、時計を見る動作。これでいったい何度目だろう?

さっきより進んだ針。

視線を上げ、仲間の姿を探した。

ほかの仲間はもうみな戻ってきている。

「……遅い」

もう一度、つぶやいた。

彼が待っているのは、買い物に行くといって出かけていった、レインとクローディア。

綺麗な蒼と茶の髪は遠くから見ても良く目立つ。

戻ってきたらすぐわかるはずだと、ギルドは思って、ここで待っていた。

というのも、彼女たちが出かけてから、もうずいぶんたつ。

暗くなってから、女性だけで出歩くのは危険だということは、よくわかっているはずだった。

だからこそ、さっさと帰ってくるようにといってあったのに……

「何で帰ってこないんだよ…」

ため息をついて、ギルドは立ち上がった。

迷子、ということはまずありえないだろう。

ここで考えていてもしょうがない。探しにいくしかないか、そう思って。

と、そのときだった。

「え、き、君は……?」

困惑した、アキラの声に、ギルドは振り向き……驚いた顔をした。

そこにいたのは、一度だけあったことのある……きっと、もう二度と会うことはないだろうと思っていた人物だったのだから。

「る……ルカ?」

ギルドが声をかければ、顔を上げるその人物。

黒髪。赤い瞳。白い騎士服。そして、腰のベルトに差し込まれた、銀色の剣。

ギルドの瞳を捕らえると、ルカはほっとしたような顔をした。

「久しぶり」

「あ、あぁ。久しぶり」

何故ここに?その問いを投げかける前に、ルカは口を開いた。

「ちゃんとお前のところにこれてよかった」

「……?どういうことだよ」

話が飲み込めない。

ギルドでさえその状況なのだ。ほかの仲間たちはなおのこと混乱している。

しかし、事情を説明している場合ではなさそうだと、ギルドは感じていた。

ルカの表情が、あのときより……ずっとずっと、引き締まっていたから。

「俺たちの世界に、来て欲しいんだ」

「え?!」

「いや……正式にいえば、"お前の仲間を迎えに"来て欲しい」

ルカの言葉に、ギルドは目を見開く。

まさか。

「レインとクローディア……?」

ギルドがその名を口にすれば、ルカはゆっくりと頷いた。

「茶色の髪のお嬢さんの名前は知らないけど、レイン様と一緒にいたよ。

 きっと、お前の仲間だろうと思った」

ギルドは思わずルカに詰め寄った。

「どういうことだよ!?」

いったいどういうことなのだ。

さっきまで、この世界にいたのだ。

何故それが、今は異世界にいるのか?

この前のことは、特殊ケースではなかったのか。

聞きたいことが多すぎて混乱する。

「ギルド」

落ち着いて、というようにアキラがギルドの肩に手を置いた。

「……ごめん」

「いや。いい。気にするな。何より俺も……いや、なんでもない」

何かを言いかけて、ルカは言葉を切った。

そして、そのまま告げる。

「最近、俺たちの世界で厄介な魔術師が現れてな、色々な世界を行き来できる魔法を使えるらしい。

 それで、いたる世界の人間をさらっている。

 ……きっと、レイン様とクローディア様も、それでつかまったんだろう」

「そいつの、目的は?」

ギルドが問うと、ルカはふぅ、と溜息をついて、いった。

「……趣味。悪趣味なやつでな……仲間を奪われて、途方にくれている人間を見るのがすきなんだって」

「……ふざけやがって」

はき捨てるように、ギルドが言う。唇をきつく噛んだ。

「いいか、ギルド。俺たちは、違う。レイン様も、クローディア様も、救える。

 だけど……そのためには、彼女たちの仲間である、お前らの力が必要なんだ。

 本当なら……俺一人で、連れ出して帰ってきたいんだけど、

 俺だけだと……"声"が、届かない」

「声?」

ルカはそういうとうつむいた。

「奴は……魔術で、攫った人間を眠らせるんだ。

 その人間は……"迎え"が来ないと、目を覚まさない。

 ジェイドが、そういってたんだ」

「つまり……"仲間である俺たち"が、声をかけないと……」

「駄目、ってことだ。

 だが、あいにく俺は魔術が使えない。異世界を行き来するには、膨大な量の魔力が必要なんだ。

 だから……連れて行けるのは、誰か一人だけ」

本当は。

全員連れて行きたい。

そのほうが、目を覚まさせるとができる確立が高いから。

だけど、それは無理だから、と。ルカは言って、ギルドを見つめた。

ギルドは、自分の仲間を見る。

こんなにたくさん仲間がいる。

その代表として……

「俺がいってきても、いいか?」


ギルドの言葉に、仲間たちは頷いた。


 
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