騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□最高のプレゼント ― 聖夜の奇跡 ―(由月さんのお子様とコラボ)
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―― サンタさん、サンタさん。いい子にしてた、僕たちに、最高のプレゼントをください。
聖夜に奇跡が起きるというなら、その奇跡を今、僕たちに……
最高のプレゼント ― 聖夜の奇跡 ― (由月さんのお子様とコラボ)
ここは、クレンシア大陸。
その大陸にあるギルド、グロースに集っていたエルノ、ロディス、シャープ、ウィロウは、
机の上におかれた、小さなビンを見つめていた。
「……罠だったらどうするんですか」
冷静に、エルノが問う。先ほどから、何度も繰り返してきた質問だった。
この騒動の元凶である小瓶がこの場所に現れたのは、ざっと数十分前。
偶然集まっていた四人の前に、まるで狙っていたかのように、この小瓶が落ちてきたのだ。
奇妙な手紙とともに。
『逢いにおいでよ。今なら、約束を果たせる。この薬を飲めば、こちらにこれるから。みんな待ってるよ。
アンバー』
短い、手紙。そして、どこかで見た記憶のある名前と紋章……
「アンバーって、フィアたちを迎えに来た人の一人だろ?その人が嘘つくとは、俺は思えない」
エルノの考えを否定して、ロディスが言う。
彼の瞳は興味深々にその小瓶を捕らえていた。
「……俺も、簡単に賛成することは出来ないな」
表情を変えることなく、シャープがそういう。
ギルドマスターとして、仲間を守るのは至極当然なことだ。
得体の知れないものを口にするなど、自殺行為に等しい。
「……(でも、罠じゃなかったら?本当に、フィアさんたちが待ってたら?)」
純な瞳をシャープに向けて、言葉を持たないウィロウは問うた。
彼女も、半信半疑とはいえ、もしも1%でも、彼らに会えるかもしれないというのなら、
この手紙を信じたいと思っているらしかった。
そう、彼らの元に届いたのは、かつて、偶然この世界にやってきた、異世界からの旅人の、仲間からの贈り物らしいのである。
アンバーという何は、聞き覚えがあったし、何より…
「俺たちしかあいつらには会ってないわけだろ?
それなのに、ここまで忠実にフィアの剣やルカの盾にあった紋章を描けるやつがいるか?」
ロディスはそういって、手紙の真ん中にある、大きなマーク……フィアたちの国の紋章であろうマークを指差した。
「……1%でも可能性があるなら、やってみようぜ?」
な、といってロディスは反対組の二人を見つめる。ウィロウもじっと二人を見つめた。
「…もしも毒だったりしたら、一生ロディのことをうらみますからね」
「まぁ、大丈夫だと信じたいけどな……」
シャープとエルノが折れれば、ロディスとウィロウは顔を輝かせた。
そして、小瓶の中身を一口ずつ、口に含んだ。
ぎゅっと目を閉じた。毒なら、すぐにでも症状が出るはず……そう思った。
しかし、何もおきない。恐る恐る、エルノは目を開けた。そして、はっとする。
自分たちの体が白く光っている。そう、まるで。
フィアとルカが、姿を消したときのように。
どうやら、薬は本物だったらしい。
そう考えるのと、眠るように意識が途切れるのはほぼ同時で。
四人はともに、世界を渡った。