騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□記憶の欠片と花冠
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記憶の欠片と花冠
記憶なんて消えてしまえばいいと、あの日から何度も思った。
でも、それでもやっぱり俺は……
「起きろフィア!訓練始まる時間だぞ!」
木の陰で眠っていたフィアをルカが叩き起こした。
ぼんやりと目を開けたフィアは……二コリ、と微笑むとすっと手を差し出して、
「あげる」
と一言。
きょとんとしたのはもちろんルカで。
無論、フィアの手には何もなく、“あげる“と言えるものはない。
は?と聞き返すルカ。
その直後にフィアの目に光がともり、ハッとした顔をした。
「うわぁッ?!な、何でルカがここに……?!」
「はぁ?!さっきから起こしてんだよ!訓練!
最近なんかお前、良く寝るなァ……それ以上デカくならなくていいから、寝るな(女としちゃあ十分な身長だよ)。
……というか、今の何?」
「え?」
「あげるって、なんかボヤーっとした声で言ったぞ、お前」
それを聞き、フィアの顔が真っ赤になる。
「ね、寝呆けた?!」
「そうらしいな……なんの夢、見てたんだよ?」
「いわない!」
フィアはすっと立ち上がるとさっさと訓練所の方へ歩いていった。
「一体なんだってんだよ……」