騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□意地っ張りもほどほどに。
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意地っ張りもほどほどに。
―― いつもクールで冷静なフィア。その表情はいつだってポーカーフェイス。
ただ、それには少々弊害があって……
いつも通りの晴れた日の事。
「今日は自主訓練だ。パートナーとやってもよし、一人でやってもよし。さぼるなよ。じゃあ、始め!」
雪狼の訓練所。上官の騎士に命じられ、フィアとシストも訓練に取り掛かろうとしていた。
「今日は魔術の方の練習するか」
「あぁ。構わない」
「リミッターはつけててくれよ?頼むから」
冗談交じりにシストが言うと、フィアは苦笑しつつ、頷いた。
「フィアから来いよ。俺がそれ止める」
「了解」
フィアは魔術剣を構えた。
「……水晶霧(クリスタル・ミスト)!」
……いつもなら、すぐに発動する初歩的な術。フィアにとっては容易い術のはず。
なのに……
「……?どうしたフィア?珍しく不発か?」
「あ、あれ……」
フィアは悔しそうな顔をする。シストが、“まぁ、落ち着けって“といって、もう一度やらせるが、やはり不発。
「……もういい。俺、ちょっと休んでくるから、シスト一人でやっててくれるか?」
「え?」
「いや、魔術が発動しない相手とやっても意味ないだろ。だから……ごめんな」
フィアはそう言って、シストから離れていった。
「……変なフィア」