騎士たちの集会所(Knight 短編小説)
□こんな夜だから。
1ページ/6ページ
こんな夜だから。
Side フィア
―― 忘れられない記憶ってのは、どうしてもあるもので。俺にとってのそれは……家族の、死で。
いまだに見る、その時の夢。
強くなりたい。そう思って騎士になった。そのはずだけれど……やっぱり、夢を見た後は、酷く不安になるんだ。
俺はやっぱり、まだ弱いんだろうな……
「……ッ!」
飛び起きた。
まだぼんやりと残る、夢の記憶。
燃えていた部屋、一人で怯え、震えていた暗闇……
「……ははっ……情け、ない」
泣きそうだった。
妙にリアルな俺の記憶。
死んでいく、村の人たち。父、母。怯えて何もできない弱い自分……
「……助けて」
久しぶりに呟いた言葉だった。
助けて。
たすけて。
タスケテ。
弱音なんて、吐きたくない。そう思うのに、心と体が繋がっていないみたいに、零れ落ちる何か。
言ってしまうのが怖かった。自分を保てない気がしたんだ。
精一杯強がって、平気なフリをして、生意気で、可愛くなくて、素直じゃない俺を演じることで、俺は“俺”を保っていた。
もう眠れない気がして、俺はそっとベッドから抜け出した。
他の仲間たちはきっとまだ眠っているだろう。
起こすのは気が引ける。だから、魔術を使って足音を消した。