騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□こんな夜だから。
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こんな夜だから。













Side フィア






―― 忘れられない記憶ってのは、どうしてもあるもので。俺にとってのそれは……家族の、死で。


   いまだに見る、その時の夢。


   強くなりたい。そう思って騎士になった。そのはずだけれど……やっぱり、夢を見た後は、酷く不安になるんだ。


   俺はやっぱり、まだ弱いんだろうな……
















「……ッ!」

 飛び起きた。

まだぼんやりと残る、夢の記憶。

燃えていた部屋、一人で怯え、震えていた暗闇……




「……ははっ……情け、ない」



 泣きそうだった。



 妙にリアルな俺の記憶。

死んでいく、村の人たち。父、母。怯えて何もできない弱い自分……



「……助けて」


 久しぶりに呟いた言葉だった。


 助けて。

 たすけて。

 タスケテ。



 弱音なんて、吐きたくない。そう思うのに、心と体が繋がっていないみたいに、零れ落ちる何か。



 言ってしまうのが怖かった。自分を保てない気がしたんだ。


 精一杯強がって、平気なフリをして、生意気で、可愛くなくて、素直じゃない俺を演じることで、俺は“俺”を保っていた。


 もう眠れない気がして、俺はそっとベッドから抜け出した。

他の仲間たちはきっとまだ眠っているだろう。

起こすのは気が引ける。だから、魔術を使って足音を消した。




 
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