騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□魔法の言葉(子豚様とコラボ)
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―― 夢の世界





三人は、仲間の迎えを待っていた。

暗く、静かな空間では、気がめいる。

だんだんに、三人も無口になりつつあった。


―― もしかしたら……



考えたくない仮定が、頭の中をめぐる。

仲間を信じている。それは事実だけれど。

これだけの人間の精神を異空間に閉じ込めることができる人間だ。

もしかしたら、ギルドやルカの記憶さえもいじって、自分たちのことを忘れさせてしまったかも。

だとしたら……

最悪のケースばかりが頭に浮かんでしまう。

フィアはうつむきがちになった。

そんな彼女の手を握る、優しい手。

「大丈夫だよ」

優しい声。優しい、桃色の瞳。

「大丈夫」

レインは何度も繰り返した。

フィアが、道を見失わないように。

仲間を信じていられるように。

「……ありがとうございます」

フィアはかすかに微笑んで、頷いた。











どれくらいのときが過ぎただろう。

数時間しか立っていない気もするし、何日もたったような気もする。

そんなときだった。

「……ギルド?」

ぴくり、とレインが反応した。

フィアとクローディアには、何も聞こえなかったらしく、きょとんとする。

「声が、聞こえた気がして……」

レインはあたりを見渡した。

ギルドの姿は見えない。

気のせいか……ちょっと落胆して、そうつぶやいたとき。





―― おきろ二人とも!帰るぞ、俺たちの世界へ!!






今度は。

はっきりと、聞こえた。

ギルドの声。

かけがえのない、仲間の声。

「ギルド!」

レインは叫んで立ち上がった。

辺りをみまわす。

そして、見つけた。ある一点を。

雲が晴れたように、真っ暗な空間に一箇所だけ。

外の世界が、見える場所があった。

そこにたっているのは、オレンジ色の髪の少年。

必死に、こちらに向かって叫んでいる。



―― レイン


―― クローディア


―― フィアも


―― 帰ろう。元の世界に……!



叫ぶ、彼の声。

「ルカ……」

ギルドの後ろには、ちらちらと、剣を振るう自らの従兄の姿。

真剣なその表情に、フィアのほほが、思わず緩む。

「ね?大丈夫だったでしょ?」

レインが笑うと、フィアは力強く頷いた。

クローディアは表情を引き締め、いう。

「これから、どうしたらいいのでしょう……」

「こちらから、答えればいいのです。

 "私たちはここにいる"と」

フィアが微笑んでいうと、レインはにっこり笑った。

息を吸い込む。



「ギルドー!」




―― 私たちは、ここにいるよ。


―― 迎えに来てくれて、ありがとう。




三人を、白い光が包んだ。


 
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