騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□魔法の言葉(子豚様とコラボ)
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こちらは、廃墟の入り口。

「よし。ようやく全部倒したな」

「あぁ。意外と楽勝だった」

剣をしまい、魔力を弱めてから、ルカとギルドは笑いあった。

彼らの後ろには、倒れた魔獣たちが山となっている。

「さて。じゃあ、いこうぜ。俺たちの仲間を助けに」

「あぁ」

二人は歩き出した。














そして、たどり着いたのは、狭い部屋。

そこには、怪しげな匂いが満ちていた。

魔術のにおい。

薬のにおい。

思わず顔をしかめる、二人。

「!ギルド!」

ルカが何かに気づいて、声を上げた。

ギルドはそちらを振り向いて、目を見開く。

大きなガラス張りのショーケース。

まるで、見せのディスプレイのようなそこに、人間が人形のように並べられていた。

そして、その中に……

「レイン!クローディア!」

眠っている、自らの仲間。

かけがえのない、仲間。

ガラスを叩いて、叫んでも、二人は目を覚まさない。

その隣には、フィアの姿もあった。

「フィア……っくそ!ふざけやがって」

毒づくルカ。

仲間の名を呼び続ける、ギルド。

そんな二人の前に……

「おや。久しぶりに客人が見えましたね」

一人の男が、現れた。

長い赤い髪をひとつに束ね、メガネをかけたその男は、二人を見るとふっと笑った。

「最近は少ないのですよ。仲間を助けに来る者が、ね」

「来るに決まってんだろ……ここにいる人たちを、解放しろ!」

ギルドが叫ぶ。

男はあざ笑った。

「解放する?そんなわけないでしょう。せっかく集めたコレクションなのですから」

男の言葉に、ルカがちっと舌打ちした。

「どこまでも悪趣味な奴だな……!」

剣を抜き、飛び掛るルカ。

ギルドはそれを見て、驚いた顔をする。

「ルカ!」

「こっちは一人で平気だ!ギルド、お前はお前の仲間を呼んで、起こしてやれ!」

それがお前の役目だと、ルカはそういうとふっと笑った。

「……わかった!」

ギルドは答えると、ガラスケースに視線を戻した。

「レイン!クローディア!」

名前を呼ぶ。

果たして、この声はガラスの向こうへ、聞こえているのだろうか?

「無駄ですよ。そんなことで、この魔術は解けない」

ギルドを見て、男は嗤った。

無駄なことだと。

もう二度と、そのものたちは目を覚まさないと。

「そこにいる人たちに、あなたたちの声はもう、届きませんよ」

「うるせぇ!グダグダぬかすんじゃねぇ!」

ギルドとルカの言葉が重なる。

ルカが男に斬りかかる。

「ギルド、あきらめんな!呼び続けろ!絶対に、届くから!」

ルカの声に、ギルドは頷いた。

絶対届く。信じている。

ギルドは、仲間のほうへ、目を向けた。

眠っている二人。

大切な仲間。

どうしたら、目を差ます?

どうしたら、"声"が届く?

ギルドは、考えた。

視界の端では、ルカが剣を振るっている。

相手の男は、難なくそれをかわしているようだった。

早く起こさないと。そして、加勢しないと。

あせればあせるほど、その声は上ずり、届かない。

ギルドはひとつ、深呼吸した。




―― 理屈なんか、関係ない。






臭い愛のセリフだとか、

綺麗事並べ立てたような、取ってつけたセリフなんかが、届くはずない。


届くとしたら……





「おきろ二人とも!帰るぞ、俺たちの世界へ!!」




 
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