騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□精霊と麗竜 ― ハジマリの時 ―
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Side アル





―― 今でも、あいつは俺にとって最高の相棒だよ。



アレク様はそういって、言葉を切った。

驚いた。

「そんなことが……」

僕が呟くとアレク様はにかっと笑って、もっといろいろ話してくれた。

アレク様自身のことも、ジェイド様のことも。

初めて聞いた。

ジェイド様の、アレク様の、過去。

今でこそ、一つの部隊をまとめる、強く、頼れる部隊長。

そんなあの人たちも、僕たちと同じように訓練をしていた頃があったんだ。

当たり前のことだけれど、なんだかひどく、非現実的に感じてた、その事実。

でも今こうして、アレク様に話を聞いて、なんだか……

「ほっとした、だろう?」

「えぇ」

力強く、頷く。

びっくりしたけど、それ以上に嬉しかった。

遠く遠くに感じていたジェイド様のことを知れた。

ジェイド様も、僕らと同じようなところがあったこと。

誰かと喧嘩したり、失敗したりしたことがあったこと。

それを知れただけで、何だかうれしくて……ジェイド様に、近づけた気がして。









「アレク、何やってるんですか。姿が見えないと思ったら……」

不意に聞こえたその声に、僕もアレク様も振り向く。

「ジェイド」

「ジェイド様」

「アルとアレクが一緒にいるとは……珍しいですね」

どうかしたんですか?と尋ねながらジェイド様は僕の隣に座った。

アレク様は笑いながら、僕に話していたことを説明する。

「な……?!」

驚愕。その一言に尽きる表情。

言葉を発することなく口をパクパクさせるジェイド様に、アレク様は笑いかける。

「いいだろ?あんな昔の話。もう七年経つんだぜ?時効だ時効」

「じ、時効じゃないですよ!まったく……」

溜息をついて、ジェイド様は髪を掻き揚げる。

心なしか、顔が赤い。

珍しいな、ジェイド様がこんな顔をするなんて。

「いいじゃねぇか。お前の大事な教え子を元気づけるためだ」

「貴方の目的はわかりきっていますが……恥ずかしいですね……」

そういって、ジェイド様は僕を見て笑った。



―― 教え子たちにとっては、完璧で強い指導者でありたかったのですが。



その言葉を聞いて、僕は首を振る。

それと同時にアレク様がジェイド様の頭を小突いた。

「ばーか。そういうところがダメだって言ってんだろ。人間らしさ見せて何が悪いんだ」

「……そうですか」

「はい!僕、ジェイド様のことを知れて、すごくうれしかったですよ」

素直な気持ちを伝えれば、ジェイド様は照れ臭そうに笑って、僕の頭を撫でた。

「アルがそういうのなら……まぁ、いいです」

その言葉は照れ隠しだったのかな。

アレク様がクックッと笑った。

「本当にお前は素直じゃねぇな。ついでに、アルには甘い。

 まぁ、いいや。帰ろうぜ?」

「そうですね。アル、いきますよ」

そういって、僕に手を差し出すジェイド様。

僕はためらいなくその手を握る。

暖かくて優しいその手は、まぎれもなく僕の尊敬する師のもの。




―― 何時かきっと、追いついて見せます。




僕も、貴方のような素晴らしい騎士に、魔術医になって見せます。

そう思いながら、僕は先を歩いていくアレク様を、ジェイド様と一緒に追いかけた。






精霊と麗竜 ― ハジマリの時 ― Fin




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