騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□精霊と麗竜 ― ハジマリの時 ―
3ページ/7ページ




そんなときのことなんだけど……

炎豹と草鹿でペア組んで竜の討伐に行くことになったんだ。

幸か不幸か……否、その時の俺にとっては間違いなく不幸だ。ジェイドとペアになった。

その時のセラの指示だから、断ることもできずに、一緒に行くことになったんだけど……

相変わらず、あいつとの距離は開いたまんま。

俺はすたすた先を歩くし、ジェイドも好き好んで声をかけようとしない。

好都合だな、って思ってた。

別に俺一人でも戦えると思ってたし、ジェイドはあくまで防御専門。

防御なしで戦うのが本来の炎豹のスタイルだし。

俺は、そう思ってた。









会話もないままで暫く歩いた時だ。

「……あの」

「あ?」

不意に後ろから声をかけられた。

振り向けば、無論、相手はジェイドで。

ジェイドはしばらく迷うような顔をしてから、言った。

「……この任務の間だけでいいので、協力しませんか?」

「は?」

いきなり何を言い出すんだ、と俺が尋ね返したらな。



―― それまで見たことない顔をしたんだ。あいつは。



悲しそうというわけでも、怒ってるようでもない。

困ったような顔、っていうのかな。よくわからねぇけど……

そんな顔で、言った。

「貴方は僕のことが嫌いなのでしょう?それは見てわかっています。

 今更あなたの機嫌を取るつもりもありませんし、媚を売るつもりもありません。

 しかし……この任務は、あまりに危険です。

 このまま挑めば、間違いなく……」

「うるせぇよ」

「な……?!」

俺は突っぱねた。ジェイドの言葉の先が見えても、突っぱねた。

"間違いなく怪我をする"

わかってる。わかってた。

でも、バカな俺のプライドが許さなかったんだ。

一度でも、嫌だと思ったやつと馴れ合うなんて。

それも、"その任務の間だけ"ってのが、どうにも気に食わなかった。

どうせなら。




―― 仲直りしたい、とか思ってたのかもしれないな。




でも、その時の俺は、こういった。

「怪我したら怪我した時だ。死ななきゃ安い。死んだとしても、任務中に死ねるなら、本望だ」

俺の言葉で、ジェイドは、またその時まで見たことない顔をした。



―― 怒った顔。




普段にこにこしてるくせに、そういう顔もできるんじゃねぇか、って思った。

「……っもう、勝手にしてください!」

僕はもう知りません、なんていってもう俺のことをみなかった。

その様子はまるで拗ねた子供みたいで。

その時はびっくりしたよ。

アイツのそういう子供っぽいところとか、初めて見たし。











そんな険悪なムードのままでやっとたどり着いた、魔獣の住処。

俺は剣を抜いて、魔獣に飛び掛かる。

アイツは、宣言通り何もしなかった。

"勝手にしろ"と言われたから、俺はあいつにいったんだ。



―― これは俺の喧嘩だ。手ェ出すんじゃねぇぞ。



今思えば、ただの阿呆だ、俺は。

でもそん時の俺は、いたって普通に龍と一対一で向かい合った。

防御なしで竜に挑むなんて、ただの馬鹿だ。

ジェイドが躊躇いがちにこちらに魔術を向けようとするたびに、睨んで止めた。

俺がそうすると向こうだってムキになって、魔術の発動を止めた。

想像つくか?今のジェイドからそんな姿が。

あれでいて、結構ガキっぽいところがあったんだぜ、あいつも……






 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ