騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□精霊と麗竜 ― ハジマリの時 ―
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Side アレク



―― 俺がまだ16歳だった時。



俺は、ディアロ城騎士団のアークの騎士に昇進した。で、炎豹に配属された。

俺の家は代々炎豹の騎士として、この国を護ってきた家系でな。

炎属性魔術が得意で、戦術にも長けている人間なのだから当然の配属だったといえる。

そんな風に配属され、暫くした時のことだ。

「……いけすかねぇ奴」

俺には、どうにも好きになれねぇ奴がいた。

俺の視線の先にいるのは美しい翡翠色の髪を一つに束ねた少年の姿。

穏やかに微笑んでいる彼の名は、ジェイド・シレーネ。

……そう、お前の師匠だ。

俺とジェイドは、真逆の性格だ。

頭はよくねぇ肉体派で、どっちかといえば乱暴なタイプの俺と、頭脳明晰、性格は穏やかで物腰柔らかいジェイド。

敬語が苦手で、どうにも喧嘩腰になりがちな俺に対して、ジェイドは常に敬語で話し、誰にでも優しい。

そんなアイツを嫌う人間など、いなかった。

だけど、俺はそんなジェイドのことが嫌いだった。












ってのも、ちょっとしたいざこざがあってな。

俺たちがアークの騎士になったばっかりの時に、草鹿と炎豹の訓練があったんだ。

その時に、ちょっと炎豹の部隊内で喧嘩になってな。

他の部隊の奴らにとっては取るに足らないことかもしれないんだが……

たがいに、互いの戦闘能力を馬鹿にする、ってのがきっかけだったと思うんだよ。

それで、あいつらは決闘を始めた。

ちゃんとルールに則ったものだったし、だれも止めなかった。

それが、戦闘部隊では礼儀だったからな。

だけど……

決闘始まってすぐ、矢が飛んできた。

びっくりしたよ。狙い過たず、決闘してた2人の足元に刺さったんだ。

それを放ったのが、他でもないジェイド。




―― なにをしているんですか。邪魔になります。




きっぱりと、あいつは、ジェイドはそういった。

何か、やる気っていうか……そういうもん、そがれるだろ。

で、その二人の決闘はなしになったんだけど……

その時の俺は、それが許せなくてな。

ジェイドに突っかかってったンだ。










「おい、テメェ!」

「はい?なんでしょう」

キョトンとして俺の方を見たジェイドはいたって落ち着いていた。

俺が怒ってる、って気づいているはずなのに、気づいてないみたいな顔しやがって。

それがひどく気に食わなかった。

「他部隊のくせに、俺たちの部隊内の決闘の邪魔してんじゃねぇよ!!」




……今思えば、俺の馬鹿さに顔が熱くなってくる。

ジェイドは俺の言葉に一瞬驚いたような顔をした後、笑ったんだ。




「確かに僕は他部隊ですが、目の前で喧嘩が起きていれば止めます。周りの邪魔にもなりますし、怪我人が出ては大変でしょう」

「……お前の矢が一番危なかった気がするが……?」

それは、本気で思った。

俺たちの決闘は派手に見えるかもしれないが、あれでいて意外と怪我はしない。

逆に、予想外の方向から飛んできたあの矢の方が恐ろしいと思った。

俺の言葉にジェイドはくすくす笑って、言った。

「大丈夫ですよ。僕の家は代々弓使いですから、狙いを外すようなヘマはしません」

そういう問題じゃねぇだろ!そうツッコみいれる前に、ジェイドはさっさと歩きだしてた。

その飄々とした態度とか、本心悟らせない笑い方とかが気に食わなかったんだろうな、俺は。

そん時から、酷くジェイドのことを毛嫌いするようになってた。








 
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