騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□黒×白 ― 貴方に永久の忠誠を… ―
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「……どうすればいいですか?」

ブランはノアールに指示を仰いだ。

ノアールはしばし悩むような顔をした後、ふっと笑みを浮かべて、言った。

「燃やそうか……何もかもを」

「……了解です」

ブランは笑みを返した。

そして、指先に魔力を込めて……放った。




「……僕の魔術だけじゃ、弱いですね」

「そうだな」

「……火竜を、召喚しましょうか」

しばし考えてからブランが提案すると、ノアールは頷いた。

「あぁ……それがいい。その方が、この町の人間の恐怖を、煽れるだろう……

 ……そうだ、この町から誰も出られぬように、街の周りに障壁を張っておけ」

残忍な、ノアールの笑み。

ブランは、頷いた。


―― 仰せのままに。







ブランは、数多くの火竜を呼んだ。

火竜は瞬く間に街を襲った。

人間を襲った。

そしてブランは障壁を張った。

全ては、ノアールの指示通りに。






―― 怖かった。


ノアールに嫌われてしまうこと。

ノアールに"いらない"と言われてしまうこと。

不必要と言われることが怖かったんじゃない。

"ノアールに"嫌われるのが、とにかく嫌だった。

だから、だから。


―― 嫌だ。


嫌われるのは、嫌だ。


―― 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……!


だから。

だから。

壊した。すべてを。




「ッ……ふふふ……あはははっ!……いい気味、いい気味だよ……!」

笑った。

逃げ惑う人々を見て。

自分の障壁で、逃げ場を失った人々を見て。

かつて、自分が住んでいた街が壊れていく様を見て。

笑った。

狂ったように、笑った。





それを見て、ノアールは満足そうに笑みを浮かべる。

「よくやった、ブラン」

そういって、頭を撫でる。

「えへへ……!これくらいお手の物です」

ブランはうれしそうに頬を染めて、笑う。



―― ノア兄様に褒められた……!


それだけで、すべてが喜びに変わる。

自分の街の人々を殺めた罪悪感や悲しささえも。



 
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