騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□黒×白 ― 貴方に永久の忠誠を… ―
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ブランシュが影猫のメンバーになって、どれくらいの時間がたったころだろう。

「……ブラン、行くぞ。仕事だ」

「はい!」

ノアールに呼ばれ、ブランは元気よく返事をした。

普段、ノアールはロシャと一緒に行動する。

或いは、ブランがロシャと一緒に行動する。

だから、たまにこうしてともに仕事をできるときが、ブランにとって幸せだった。

"仕事"が、どんなものであっても。

"人を殺す"といったものでも。

ブランは、笑顔でこなした。

"仕事"を終えた時、ノアールが少し乱暴に頭を撫でてくれることを、知っていたから。






しかし、今日は。


―― その行先を、知って、ブランは思わず凍りついた。



「此処って……」

「お前の、生きていた街だろう?」

知っているさ、とノアールはそっけなく言った。

そう。

彼らがやってきたのは、ブランシュが"生きていた"頃に住んでいた街。

「ここで、何をするのですか……?」

ブランは、ノアールに尋ねた。

「……街を滅ぼす」

「!」

「お前の魔力を使えば、簡単なことだろう……?」

ノアールはブランを甚振るように見つめた。

ブランは、何度も瞬きをする。



―― 決して、思い入れがあるわけではない。



でも、それでも。

一瞬……ほんの一瞬、迷った。

戸惑った。




その迷いを、ノアールは見逃さなかった。

「……出来ないのか?」

冷たい、声。

ブランは、はっとした。

ノアールの目を見る。

冷たい、視線。


―― できないのならば……



"いらない"

そういわれてしまう気がした。





「……いえ」

「ならば、やれ……ブラン」

「……はい」

ブランは、頷く。





彼の身体能力は、著しく低い。

その代わり、魔力は影猫のメンバーの誰より強かった。

どんな属性の魔術も、用意に使いこなせる。

ブランは、街に降りた。

きっと、傍から見れば、幼い子供が父親……或いは、兄と歩いているようにしか、見えないだろう。



 
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