騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□黒×白 ― 貴方に永久の忠誠を… ―
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ブランが影猫のメンバーとしてそこに住むようになって、しばらくたったある日のことだった。

「……ねぇ、ブランはさぁ……どうして、あそこまで、ノアールに執着するの?

 もう、執着の域を超えて"愛情"だよ、それは」

ある日、ロシャはブランに尋ねた。

どういう意味?とブランが首をかしげると、ロシャはしばし言葉に迷ってから、言った。

「ブランは、御主人(マスター)のためにっていうよりは、ノアールのために、って感じで戦ってるじゃん?

 それが不思議だなぁ、って思ってさ」

別にかまわないんだけど、と言ってロシャは鎌磨きに戻った。

「……どうしてって言われても、別に特別な理由はないよ」

そういって、誤魔化した。

本当は、違う。


―― あのひ。


自分を救い出してくれたノアールに、感謝して、精一杯の恩返しをしたいと思って。

だからこそ、あそこまでノアールに執着している。

常に、傍にいたいと。

五月蠅がられてもノアールから離れようとしないのは、それが理由だった。







「ロシャは違うの?ロシャもノア兄様に……」

言いかけて、ブランは口をつぐんだ。

メンバーの中で"過去"の話はタブーだったから。

しかし、ロシャはその言葉尻をとらえて、小さく笑った。

「僕はちょっと違うかな。どっちかっていうと……復讐心?」

「復讐?」

「そ。憎い憎い裏切り者に、復讐するの。

 そのために、御主人やノアールに従ってるんだよ。

 ……ここにいる仲間以外に僕が信用できる相手は、いないから」

そういって笑うロシャの瞳には、普段と違う光が宿っていた。



―― ……昔の、自分のような光が。



「……そうなんだ」

「うん」

それっきり、ロシャは口を開こうとしなかった。

ブランも、口をつぐむ。




――愛情の理由?



そもそも、これが愛情であるかどうかさえ、ブランには分かっていなかった。

"愛"なんて言葉は、ブランにとって最も疎遠な言葉の部類だったから。

でも……

酷く曖昧な、その感情を"愛情"と呼ぶのなら。

「……感謝と、尊敬……なのかな」

ブランは、小さく呟く。

「え?」

「……ううん、何でもない」

ブランの言葉に反応したロシャが首をかしげるが、ブランは首を振った。




その愛の根拠を述べよ。
― 根拠なんてない。ただ好きなんだ。大切なんだ。大好きなんだよ……兄様のことが。 ―



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