騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□黒×白 ― 貴方に永久の忠誠を… ―
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「……どうやら、馴染んだようだな」

暫くして、ノアールが部屋に戻ってきた。

そして、ブランに服を投げつける。

「……着替えて来い」

「は、はい」

服を拾い上げて駆け出したブランをロシャが呼び止めた。

「これ、影猫のメンバーである証だから、どこかにつけといてね」

ロシャに渡されたのは、黒いリボン。

見れば、その場にいた全員がどこかしらにそれを付けている。

シャムとペルは左手首に。

ロシャは彼の武器であろう鎌に。

そして、ノアールは……ワイシャツのネクタイ代わりとして。

「え……あ、わかった」

ブランはうなずいて、服を着替えに行った。





「き、着替えてきました……ありがとう、ございました」

戻ってきたブランは、おずおずとノアールに礼を言った。

彼の首元には、あの黒いリボン。

そう……ノアールと、同じように。

ノアールはそんなブランを一瞥すると、小さくうなずいた。

「……そんなに堅苦しくする必要はない……共に戦っていく……"仲間"なのだから」

その言葉に、ブランは目を見開いた。



―― どれほど、うれしかっただろう?







その日から、だった。

ブランがノアールのことを"ノア兄様"と呼び、崇拝に近い形で慕うようになったのは。




「ノア兄様!!」

「……なんだ、ブランシュ」

「だからー!ブランって呼んでくださいってばぁ!」

「……ブラン」

彼が、ブランの名を呼ぶたび、ブランはうれしそうに笑う。




―― 本当は、知っている。


ブランだって、心の奥底では感じていた。

自分が、ノアールに対して抱いている感情は異常であるということくらい。

仲間としての信頼や、先輩としての尊敬などという、小さな言葉ではなかった。

"依存"或いは"愛情"に近いそれを、決してノアールが受け入れることがないということも、わかっていた。

しかし、ブランはそれを理解したうえで、ノアールの名を呼び続ける。




―― それほどまでに、僕は貴方を……!




許されぬ思いと知りつつも、ブランは"兄様"という言葉にその感情を隠して、ノアールを呼び続けた。

慕い続けた。

ずっと、ずっと……

自分を救ってくれた、ノアールのことを……




誤魔化して、この気持ちが消え去るまで。
― この気持ちが消えることなどないと、本当は知っていた ―



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