騎士たちの集会所(Knight 短編小説)

□黒×白 ― 貴方に永久の忠誠を… ―
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二人がたどりついたのは、古い城だった。

廃墟、と言った方が正しいような気もしたが、中に入ってみれば意外と整えられている。

「……ここが、これからお前の家だ。俺や、他のメンバーと一緒に、暮らしてもらう」

そういって、ノアールはドアを開けた。

「あ、お帰りノアール」

「……お帰り」

「なぁ、腹減った!」

一斉に降ってきた声に、ブランは驚いた。

そして、反射的にノアールの後ろに隠れる。

しかし、くせっけの少年が、その陰に気付いた。

「ノアール、後ろにいるの、誰?」

「……新しい、操り人形だ」

乱暴に自分の後ろから少年を引きずり出す。そして、興味津々のメンバーの前に突き出した。

「うわ、ちっせー」

髪を立たせた少年から投げられた言葉に、ブランは萎縮する。

身体が小さいのは、仕方がない。

もともと、ブランが死んだのは十歳くらいの時。

容姿は大体、その"魂"が死んだときの容姿になる。

「……名前は?」

つややかな黒髪を長く伸ばした少年が、光の灯らない瞳でブランを見た。

「え……あ、ぶ、ブランシュ……」

おどおどしつつ、彼が答えると、最初にブランに気付いたくせ毛の少年が顔を顰めた。

「ブランシュ?なんか呼びにくいなぁ……ブランでいい?いいよね、よし、決定!」

半ば強引に決定された、ブランシュのニックネーム……ブラン。

「ブラン……いいんじゃないか。呼びやすいし」

「……そうだね」

「ね、いいでしょ、ノアール」

「……俺は何でも構わない。

 とりあえず、これからそいつもここの一員だ。慣れるまで、面倒見てやれ……

 俺は適当に服を探してくる」

ノアールはそっけなく言うとブランを少年たちの中に放置して、別の部屋に行ってしまった。






「あ、まだ名前言ってなかった。俺はシャム。よろしくな」

黒髪を立たせた少年がそう言って、軽くブランの頭を撫でた。

「……僕は、ペル」

言葉少なに言ったのは、長い髪の少年。

「僕はロシャ。なんか親近感わくな、小さいから」

そういって悪戯っぽく笑う、くせ毛の少年。

ブランは何度も瞬きをした。

目の前に広がる、少し前までは考えられなかった、光景。

"仲間"なんて、"家族"なんて、知らなかった。

知らなくていいと思っていた。それなのに。

今は、こんなにも沢山、傍にいてくれる相手がいる。


それが、無条件にうれしくて。




「なぁ、ブランシュって"白"って意味だよなぁ?」

不意に、シャムが言った。

ブランはきょとんとする。

「……そう。シャムにしては、珍しくよく知ってたね……」

「む。失礼な……俺だって、それくらい覚えてるよ」

憤慨するようにシャムが言うと、ペルは一つ溜息をついた。

「……ノアールと、対になる言葉だから?」

その言葉に、ブランは目を見開いた。

「どういう、意味?」

「……ノアールは"黒"。君の名前と、対になるの……」

わかる?と尋ねるペル。

ブランは驚いて言葉を失った。

きっと、ノアールは特に深く考えずに、自分の名を決めたのだろうということは、知っていた。

それでも。

彼と関連のある名前をもらえたことが、とてもうれしかったのだ。




 
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